被災の能登、酒造り「復興の後押しに」 ユネスコ無形文化遺産登録で関係者ら喜び
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に4日(日本時間5日)、日本の「伝統的酒造り」の登録が正式に決まった。古来から伝わる酒造りの技術を受け継ぐ日本四大杜氏(とうじ)の一つ「能登杜氏」を輩出し、1月の地震で大きな被害を受けた能登半島の酒造関係者からは「復興の後押しになる」などと喜びの声が上がった。 【写真】新酒のこうじ造りを行う数馬酒造の社員 明治2年に創業し、150年以上の歴史がある石川県能登町の「数馬(かずま)酒造」は、元日の地震で建物の壁が崩れたり、津波で泥水が流れ込んだりして酒造りの中断を余儀なくされた。その後、社員が一丸となって清掃や復旧作業を進め、4月には酒造りを再開。11月中旬からはしぼりたての新酒の出荷も始めた。 同社の広報担当、数馬しほりさん(42)は、伝統的酒造りが無形文化遺産に登録されたことに対し「先人たちが築き上げた日本の技術や精神が評価され、大変喜ばしい」と語った。 蔵など6棟ある建物のうち4棟は現在も損壊した状態。ブルーシートで覆うなどの応急対策で雨露はしのげるが、冷たい風は入りこんでくる。修復を進めたいが、工事は早くても来年秋以降になるという。 数馬さんは「能登の日本酒が地震で危機にひんしているが、今回の(登録で生まれる)機運を味方に付け、復興につなげたい」と期待を込めた。 石川県酒造組合連合会によると、甚大な被害が出た珠洲(すず)市や輪島市、能登町では、全11ある酒蔵のうち2つが酒造りを再開し、1つが春までの再開を目指す。ただ、残る8つは損壊により中断した状態で、中には再開に数年かかる見通しの酒蔵もあるという。そのため、県内外の酒蔵が被災酒蔵の酒造りを受け入れ、共同醸造を行うなど助け合っている。 連合会の裏谷重寿(しげひさ)専務理事は「能登の日本酒は『濃厚で華やか』といわれ、和食にも洋食にも合うと評価されている。登録を契機に一丸となって魅力をPRし、復興の一助としたい」と話した。(秋山紀浩) ■喜びの声、関西など各地で
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