「求められるスキルも変化している」。リスキリングを通じて、新しいチャンスを手にする人たちがイノベーションを生み出す
新卒中心の時代が長かった日本の人材市場が大きく変革を遂げようしています。 ♯1の『1年間の「キャリア採用者」は約500名!新たな風を吹かせ、変革を進めるMUFGの組織風土に迫る』は、実際にキャリア採用としてMUFGグループで働く皆さんに多様な人材が活躍できる企業文化やご自身の体験談についてお届けしました。 ♯2となる本記事では、変化する社会の中で、人材の流動化やリスキリング等を通じて、多様な人材が成長や自己実現をしやすい環境を社会全体で創っていくために、経済産業省で行っているリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業や、企業のダイバーシティ経営推進についてお話しをお伺いしました。 〈ダイバーシティ経営とキャリア採用〉♯2 【お話しいただいたのは】 ●リスキリングや労働移動の円滑化を担当されている 経済産業省 産業人材課 課長補佐 小澤 俊一郎さん ▼人的資本経営の推進を担当されている 経済産業省 産業人材課 課長補佐 西村 萌さん ■企業のダイバーシティ経営推進を担当されている 経済産業省 経済社会政策室 室長補佐 神野 真帆さん
先の見えない時代、変化のスピードが早い時代だからこそ、いま「人的資本経営」が注目されています
―多様な人材の活躍を重視する企業が増えていますが、ここ数年で、人的資本経営が注目されるようになった背景について教えてください。 ▼西村さん▼ 企業を取り巻く経営環境はグローバル化や少子高齢化、あるいはDXやGXの進展で大きく変化していますが、こうした変化に対応できる多様なスキルを持つ人材が育ち、活躍できる環境が十分に整っているかを見ていくと、様々な綻びが生じています。 ●小澤さん● 具体例として、ある調査では、日本企業の人材投資額の対GDP比率や個人で自己学習に取り組んでいる人の割合が先進各国の中でも特に低いという結果になっていますよね。 ▼西村さん▼ 日本企業の従業員エンゲージメントも、世界全体でも見ても低いようです。日本企業はこれまで社員を大事にし、長期雇用するスタイルが競争力の源泉となっていた時代がありましたが、企業環境の変化のスピードが上がる中で、画一的な雇用システムでは、もはや変化に対応することは難しくなっていると言えるかもしれませんね。 ■神野さん■ いまは、投資家も人的資本への投資に着目しています。中長期的な投資・財務戦略において重視すべきものとして、約7割の投資家が人材投資を挙げているという調査結果もあります。 既に米国市場では時価総額に占める無形資産の割合が90%ですが、人的資本は、そうした無形資産の基盤です。投資家の期待の中で、国内では、2023年3月期末決算から有価証券報告書での人的資本情報の開示の義務付けが始まっており、国際的にも開示基準の策定や更新が進んでいます。 ▼西村さん▼ そうですね。そういった世の中の流れから見ても、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげていく、「人的資本経営」を進めていくことが欠かせません。つまり、企業の人材戦略を経営戦略と連動する形で再構築し、経営戦略を実現するために、いつまでに、どのようなスキルを持つ人材を、どのくらいの数で、どこに配置する必要があるのかといった動的な人材ポートフォリオを検討し、キャリア採用を含む人材の獲得や育成を行う必要があります。多様な人材の能力が発揮されるような環境の整備も重要だと考えています。 ●小澤さん● 日本企業が人的資本経営の実践を進めるとともに、その方針について投資家等のステークホルダーと対話していくことで、人的資本に取り組む企業の企業価値が適正に評価され、世界中から資金を集め、さらに企業価値向上の取組みを進めるというサイクルが加速することに期待したいですね。
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