高市氏の「電波停止」発言に対する抗議会見(全文1)会見の趣旨ほか
政治的公平性を欠く放送を繰り返した放送局に「電波停止」を命じる可能性に言及した高市早苗総務相の発言に抗議して、田原総一朗氏らテレビ放送関係者が29日午後2時半から都内で記者会見を行った。 参加者は田原氏のほかに、鳥越俊太郎氏、岸井成格氏、大谷昭宏氏、金平茂紀氏、青木理氏ら。 田原総一郎氏らは「私たちは怒っている」という声明を発表。「放送局の電波は、国民のものであって、所管する省庁のものではない」とし、大臣による判断で電波停止ができるというのは、放送による表現の自由や健全な民主主義の発達をうたった放送法の精神に著しく反するものだと抗議した。
会見の趣旨(アピール文)
金平:最初に会見の趣旨ということで私たちが用意したアピール文を、ごめんなさい、参加者たちも紹介しようと思いましたが省略します。最初に鳥越さんのほうからこのアピール分を読み上げていただきたいと思います。 鳥越:一応、半になったら始めます。はい、2時半になりましたので、ここから始めさせていただきます。私たちは怒(いか)っている。高市総務大臣の電波停止発言は憲法、放送法の精神に反している。今年の2月8日と9日、高市早苗総務大臣が国会の衆議院予算委員会において、放送局が政治的公平性を欠く放送を繰り返したと判断した場合、放送法4条違反を理由に、電波法76条に基づいて電波停止を命じる可能性について言及した。誰が判断するのかについては同月23日の答弁で、総務大臣が最終的に判断するということになると存じますと明言している。私たちはこの一連の発言に驚き、そして怒(いか)っている。 そもそも公共放送に預かる放送局の電波は国民のものであって、所管する省庁ものではない。所管大臣の判断で電波停止などという行政処分が可能であるなどという認識は、放送による表現の自由を確保すること、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすることをうたった、放送法の第1条の精神にも著しく反するものである。さらには放送法にうたわれている放送による表現の自由は、憲法21条「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」の条文によって支えられているものだ。 高市大臣は処分のよりどころとする放送法第4条の規定は、多くのメディア法学者の間では放送事業者が自らを律する倫理規定とするのが通説である。また放送法成立当時の経緯を少しでも研究すると、この法律が戦争時の苦い経験を踏まえた放送番組への政府の干渉の排除、放送の自由、独立の確保が強く企図されていることがうかがわれる。私たちはテレビというメディアを通じて日々のニュースや情報を市民に伝達し、その背景や意味について解説し、自由な議論を展開することによって国民の知る権利に資することを目指してきた。テレビ放送が開始されてから62年になる。 男性:64年ですよ。 鳥越:64年ですか。64年になる。これまでも政治権力とメディアの間ではさまざまな葛藤や介入、干渉があったことを肌身をもって経験してきた。現在のテレビ報道を取り巻く環境が著しく息苦しさを増していないか。私たち自身もそれがなぜなのかを自らに問い続けている。外からの放送への介入、監修によってもたらされた息苦しさならはね返すこともできよう。だが自主規制、そんたく、萎縮が放送現場の内部から広がることになっては危機は一層深刻である。私たちが今日ここに集い、意思表示する理由の強い一端もそこにある。以上、呼びかけ人、青木理、大谷昭宏、金平茂紀、岸井成格、田勢康宏、田原総一朗氏、鳥越俊太郎、以上です。 金平:鳥越さんありがとうございました。それでは今日、ここに参加している呼びかけ人が順番にだいたい3分ぐらいですよね。ということで青木さんのほうから順番にお願いいたします。