【40代・50代が知っておきたい】誤嚥性肺炎とは? 原因と症状、そしてどうして生命にかかわるのかを医師が解説
高齢者の死亡原因として、よく耳にする「誤嚥(ごえん)性肺炎」。誤嚥には“喉の筋力低下”が大きくかかわっているって、ご存じだろうか。実は、40代、50代にとっても他人事ではないのだ。そもそも誤嚥とは、また、誤嚥性肺炎とはどのようなものなのか。耳鼻咽喉科専門医の西山耕一郎さんに伺った。
嚥下とは? 誤嚥とは?
「嚥下(えんげ)」とは、食べ物や飲み物、唾液を飲み込む動作のこと。私たちが「ごっくん」と飲み込むと、瞬間的に喉の筋肉が上下して、口の中の食べ物や水分が食道に送り込まれる仕組みがある。 実は飲み込む瞬間、喉仏の周囲筋が持ち上がって、気管の入口にある喉頭に蓋がされ、食べた物や飲んだ物、唾液が食道に送り込まれるメカニズムがあるのだ。この間、わずか0.5~0.8秒というのですから、驚きだ。 「生まれたばかりの赤ちゃんは誰にも教わらなくても、お母さんの母乳を『ごっくん』と飲むことができます。嚥下は反射運動のひとつ。生まれながらに備わっているすばらしい機能ですが、加齢とともに衰えてしまうのです」と西山先生。 では、誤嚥はなぜ起こるのだろうか? 「食道と気管は並んでいます。私たちが飲み込むときには脳に信号が送られ、気管の入り口にある喉頭が閉じて、食道が開き、食道に送り込まれる仕組みがあります。ところが、食道にいくはずの食べ物や飲み物、唾液が気管に入ってしまうのが『誤嚥』。気管に蓋がされるタイミングが遅れたり、蓋がしっかりと閉まらないなど、ちょっとしたはずみに食べた物や飲んだ物、唾液が食道にいかず、あやまって喉頭に侵入して、気管に入ってしまうのです。 いわば誤作動によって『誤嚥』が起こるわけです。そして、『誤嚥』が原因となって発症するのが『誤嚥性肺炎』です」
誤嚥性肺炎とはどんなもの?どうして生命にかかわるの?
「誤嚥性肺炎」とは、食べた物や飲んだ物、唾液や胃液が侵入して気管から肺に到達し、肺で炎症を引き起こしてしまった状態。咳や黄色っぽい痰、発熱、倦怠感などの症状を伴うのが特徴だ。 症状が進むとまったく動くことができず、食事もとれずに衰弱し、入院が必要になる。重症化すると呼吸困難を引き起こし、酸素吸入が必要になるケースもあるのだ。 私たちが吸い込んだ酸素は、気管、気管支を通って、「肺胞」と呼ばれる肺の中の無数の小さな袋にたどり着く。肺胞では“吸い込んだ酸素”と“体内の二酸化炭素”のガス交換が行われているが、細菌感染が肺胞にまで及ぶと、ガス交換に支障をきたす恐れがある。すると低酸素になり、生命維持に危険が及んでしまうのだ。 「そうはいっても、高齢者の病気でしょう?」と甘く見てはいけない。肺炎と誤嚥性肺炎を合わせると、日本人の死因の第3位(平成30年(2018)厚生労働省「人口動態統計」より)。がんや脳血管疾患、老衰が死因とされる場合も、実際には誤嚥性肺炎を併発して亡くなるケースが少なくない。