「お金返して」「契約したばかりなのに…」との声も。脱毛クリニックが「またも破産」で得るべき“教訓”
また、事業者側もキャッシュフロー改善の意図はわかるが、利用者に前払いを、強く進めない態度も重要になってくる。この意味で、利用者保護を業界として打ち出す必然性があるだろう。そうしないと、利用者は怖くて、しかたがない。このままだと、顧客がサービス利用や前払いに慎重になるケースが増えるだろう。 ■正しいルールと市場競争管理が必要 だから、突然の破産による消費者被害を最小限に抑えるための仕組み作りが急務といえるだろう。なかなか行政が参画するのは難しいとしても、業界団体が協力して債権者保護の枠組みを検討する必要があるし、それが業界のためだろう。
たとえば業界団体が協力して「保証基金」を設立し、破産時に一定額を消費者に返金する仕組みを構築することが考えられるだろう。このような枠組みがあれば、消費者は安心してサービスを利用でき、業界全体の信頼性向上にもつながる。 さすがに理想論といわれるかもしれないが、行政の介入方法として、多額の前払いを要求する事業者に対しては、かならず計算書類(決算書)を電子公告(ホームページなどでの通達)することを要求してもいい。
というのは、現在でも貸借対照表の要旨は電子公告が義務化されているものの、未上場企業のほとんどが決算書を公開していない。だから、BtoC(企業と個人の取引)をメインとする企業であれば、決算書を本気で公開させることができれば、かなりの数の被害者が減るのではないか。だって、事前に決算書を見て、赤字続きだったら誰も契約しないだろうから。 なお、個人的には脱毛事業はこれからの日本にとっても重要だと感じている。介護を考えると脱毛している人が増えるほど手間や作業は減少するに違いない。だからこそ、正しいルールと市場競争管理が必要だと思うのだ。
もちろん「アリシアクリニック」から返金されない一般利用者には同情する。同時に、これをきっかけに何らかの改善がもたらされれば、とも思うのだ。
坂口 孝則 :未来調達研究所