政活費全廃、衆院通過の背景に野党のギリギリの結束 立民、自民に譲歩迫る
立憲民主党など野党7党が共同提出した使途公開不要な政策活動費(政活費)廃止を定めた政治資金規正法再改正案は18日に始まった参院での審議を経て、今国会で成立する見通しだ。衆院では、自民党が当初、支出先を非公開にできる「公開方法工夫支出」の新設に固執したが、立民側がギリギリのタイミングで野党をまとめ、自民側に譲歩を迫った。先の衆院選で「自民1強」が崩れ、野党ペースとなった衆院通過の舞台裏を探った。 ■「自民は歩み寄らざるを得ない」 「政活費の廃止、そして企業・団体献金は3月末までに結論を出してほしい。ここは譲りませんから」 14日夕、立民の政治改革推進本部長を務める大串博志代表代行は自民の森山裕幹事長に電話でこう迫った。この電話で森山氏が政活費の廃止を認めるという感触を得た大串氏は、衆院政治改革特別委員会の担当者の落合貴之氏に「折れるな」と指示した。 自民は、前日の13日まで立民側に同支出を自民案から削除し、野党案の付則に検討項目として盛り込む修正を打診するなど粘り腰の交渉を続けていた。ただ、10月の衆院選で自民は少数与党に陥っており、大串氏は「こちらが折れなければ自民は歩み寄らざるを得ない」と見越していた。もくろみ通り、森山氏は15日に石破茂首相(自民総裁)と協議し、野党案の丸のみを決めた。 ■立民強腰の裏にれいわの存在 立民が自民に強く出られたのは、れいわ新選組が野党案に賛成するとの見通しを持てたからだ。複数の政治改革関連法案を衆院に提出していた立民だが、野党をまとめ切れず苦境が続いていた。唯一、政活費廃止法案は日本維新の会や国民民主党など7党での共同提出にこぎ着けており、野党結束の象徴にしたいとの思惑があった。ただ、れいわは「抜け穴がある」として、野党案への態度を明らかにしておらず、衆院通過は綱渡りの状況だった。 大串氏は13日、れいわの高井崇志幹事長の事務所を訪れ、「政活費廃止法案に協力してほしい」と求めた。だが、高井氏は言質を与えなかった。ただ、国会審議を通じてれいわ側が軟化しているとの印象を得ていた大串氏は、高井氏との交渉で過半数を押さえられると踏み、自民側を一気に押し倒す腹を固めた。 れいわが正式に賛成方針を決めたのは16日朝。自民政治改革本部の小泉進次郎事務局長も13日に接触していたが、他の野党の協力も見通せず、自民は多数派工作に敗れた。