石破総理の「アジア版NATO」が世界で「総スカン」を食らうヤバい理由…「アメリカ支配からの独立」を口にした政治家を待つ「恐ろしい末路」
「軍オタ総理」の見識
1957年生まれの石破総理は、「オタク最古参」の世代にあたる。少年時代には戦艦大和のプラモデルを親にせがみ、田宮模型の情報誌『タミヤニュース』やミリタリー専門誌『丸』を熟読した。 【一覧】自民党「落選危機」候補者24人の「実名」はこちら! 今でも、議員会館の自室に戦車や戦闘機、軍艦の模型が鎮座する。2013年には、イベントで陸上自衛隊の一〇式戦車に迷彩服で乗り込み、満面の笑みを浮かべる姿がネットで話題になった。 そんな石破氏を、日本のオタクたちは親しみを込めて「閣下」と呼んできた。しかし、石破氏が本当に国のトップとなり、国際情勢に真っ向から対峙せねばならなくなった今、事情は変わった。 「石破さんが総理に選出されて嬉しく思いますし、彼の見識には敬意を抱いています。ただ、総理が提唱している『アジア版NATO』構想については、ひとつの案としてはとても興味深いですが、国際社会で広く支持されることはないでしょう」 厳しい見解を語るのは、クリントン政権で米国家情報会議議長などを務めた、ハーバード大学特別功労教授・政治学者のジョセフ・ナイ氏だ。 小泉純一郎政権で防衛庁長官、福田康夫政権で防衛大臣を務めた石破総理は、自他ともに認める国防通である。『国防』『日本人のための「集団的自衛権」入門』など、外交・防衛の持論を語った著書も複数ある。 だが総裁選の論戦で掲げた「アジア版NATO」や「アメリカとの核共有構想」は、控えめに言っても、内外で「総スカン」を食らっている。
「パンドラの箱」を開ける
「我々は、そのような枠組みは考えていない」 政権発足の当日、インドのジャイシャンカル外相は「アジア版NATO」構想を全否定した。日本の友好国であるはずのインド政府が、就任直後に総理大臣の言を切り捨てたことには、相応の意味と重みがあると受け止めるべきだろう。 事実、前出のナイ氏だけでなく、海外の専門家の間でも「石破総理の外交・防衛構想は、実現不可能ではないか」という反応が大勢だ。 総理は「日米地位協定の改定」や「グアムなどアメリカ領土への自衛隊駐留」という壮大なプランも示しているが、これについて、アメリカ有数の外交・国防シンクタンク「ランド研究所」国家安全保障研究部日本部長のジェフリー・ホーナン氏が言う。 「石破総理の考えが間違っているとは思いません。しかし、現時点で日米がそうした構想を優先すべきかどうかは疑問です。 たとえば日米地位協定について言えば、アメリカは日本だけでなくドイツ、イタリア、韓国など複数の国と地位協定を結んでいますから、もし日米間で改定するということになれば、他の国も改定を望むでしょう。それは『パンドラの箱』を開けることになる。ワシントン(アメリカ政府)の同意を取り付けるのは極めて難しいと思います」