トヨタ平川亮、0.041秒届かず。キャデラックが敵地富士で会心の初ポール/WEC第7戦予選
9月14日、静岡県の富士スピードウェイにてWEC世界耐久選手権第7戦『6 HOURS OF FUJI 2024』の予選が行われ、参戦3年目にして自身初の予選アタッカーを務めた8号車トヨタGR010ハイブリッドの平川亮が、7号車をドライブしたエース兼チーム代表の小林可夢偉を撃破してのポールポジション獲得……かと思われた。 【写真】火花を上げながら富士スピードウェイのトラックを駆け抜けていくWECのハイパーカー しかしハイパーポール最終盤に"難敵"が現れ、驚異的タイムを記録したアレックス・リンがキャデラックVシリーズ.Rを初の最上位グリッドに導いた。さらに、チェッカーラップで15号車BMW MハイブリッドV8もTGR艦隊に割って入る大混戦の結果となっている。 快晴の土曜午前に実施されたFP3では、各陣営ともに午後の予選とハイパーポール進出を賭けてアタックシミュレーションを敢行するものと予想されていたが、60分間のセッション中盤にはTGR(ターン1)アウト側の縁石が損傷するという予想外のアクシデントが起き、そのまま再開されることなく走行を終えていた。 これによりハイパーカーの18台、そしてLMGT3の18台ともに本格的なアタックを充分に経ないまま予選に突入することに。そのトップバッターとなる午後14時20分から12分間のLMGT3クラス予選は、気温29℃、そして路面温度は42℃という週末最高の温度条件のなかスタートを迎えた。 ここではタイトルを狙うポルシェ911 GT3 R LMGT3のマンタイ陣営からコースインし、各車ともグッドイヤーのウォームアップを進めるなか、31号車BMW M4 LMGT3(チームWRT)のみセッション開始4分を経過するまでピット待機の判断を見せる。 各車が計測3周目にアタックラップを迎えると、まずはユナイテッド・オートスポーツのマクラーレン720S LMGT3エボの2台が上位タイムを記録するなか、最初のアタックラップを終了時点で81号車シボレー・コルベットZ06 LMGT3.R(TFスポーツ)のトム・ファン・ロンパウが1分41秒110の基準タイムを記録。ここに85号車ランボルギーニ・ウラカンLMGT3エボ2(アイアン・デイムス)のサラ・ボビーが続いていく。 4周目のラップこそ各車ともコンマ数秒ずつドロップしたものの、さらに計測5周目では55号車フェラーリ296 LMGT3(ビスタAFコルセ)のフランソワ・エリオが1分40秒932として、ここで首位を奪う。この段階で単独の40秒台とした55号車のトップが確定し、81号車コルベットと早々に切り上げていた85号車ウラカンの続くトップ3に。 小泉洋史がアタックした82号車シボレー・コルベットZ06 LMGT3.Rも4番手に入り、以下マクラーレンの2台や27号車アストンマーティン・バンテージAMR LMGT3(ハート・オブ・レーシングチーム)、77号車フォード・マスタングLMGT3(プロトン・コンペティション)に54号車フェラーリ、78号車レクサス、そして59号車マクラーレン720S LMGT3エボ(ユナイテッド・オートスポーツ)までがハイパーポールに進出し、木村武史がドライブした87号車レクサスRC F LMGT3は惜しくも11番手で敗退となってしまった。 続けて14時40分に開始されたハイパーポールも、最初の計測周からマクラーレン艦隊が先行。それを55号車フェラーリ、そして81号車コルベットが更新し、目まぐるしく首位が入れ替わる。 この短い10分間でペースを上げたのは55号車フェラーリのエリオで、続く計測4周目に1分41秒103から41秒043、そして最終アタックでは40秒893と連続自己ベスト更新を決め、81号車コルベットを逆転しポールポジションを獲得することに。フロントロウの僚友に近づくべく最後までアタックを続けた82号車の小泉は、4周目、5周目ともに自己ベストを更新も、1分41秒310として7番手となった。 路面温度は40℃と低下傾向のなか、午後15時からのハイパーカークラスもセッション開始と同時に7号車、8号車と並んだTGR艦隊を先頭に全18台が勝負へと向かう。 LMGT3のグッドイヤーとは異なり、ミシュランは軒並み計測4周目でアタックを迎えると、選手権首位を行くポルシェ・ペンスキー・モータースポーツの6号車、ケビン・エストレが1分29秒256を叩き出しタイムボードの最上位へ。それを7号車の可夢偉、8号車の平川が追う展開となる。 そのTGR陣営に割って入るかたちで、2号車キャデラックのアレックス・リンが1分29秒495として3番手へ。同じくプロトン・コンペティションの99号車ポルシェ963をドライブするジュリアン・アンドラウアーが1分29秒339とさらに更新していく。 しかしここから各セクターを自己ベストで駆け抜けたのは、地元戦で節目の10勝目を狙うGR010ハイブリッドではなくダラーラ製LMDhのキャデラックで、自身計測5周目に1分29秒090までタイムを伸ばしたリンがセッショントップを奪うことに。 これで6号車ポルシェのエストレ、99号車のアンドラウアーがトップ3で続き、35号車アルピーヌA424のシャルル・ミレッシを挟んで可夢偉が5番手、平川は8番手でハイパーポール進出を確定させた。 迎えた予選最後の勝負、15時20分から10分間の「ハイパーカーによるハイパーポール」セッションは、気合の籠ったウォームアップを続ける7号車可夢偉が、パワー削減と重量を課せられたクルマでなんとか車速を乗せ、最高速トラップで313.95km/hまで車速を伸ばしていく。 このラップが計測3周目だったものの、ホームストレートに戻ってきた可夢偉は1分29秒065という驚異的なタイムをマークし、一気にポールを決める勢いを見せる。一方、同じラップの8号車平川は、まだじっくりとタイヤの状態を見極める段階で、ひとあし早く計測4周目を戻ってきた6号車ポルシェのエストレが、ここで1分19秒152で2番手に追随していく。 このラップで平川が可夢偉に迫れるか、そして追い越せるか。サーキット中の注目が8号車に集まるなか、各セクターを自己ベストで回った平川は、ここで1分28秒台に突入する28秒942とし、チーム代表が決めた快心のアタックを鮮やかに上回ってみせる。 これで勝負は決し、下馬評では厳しい性能調整ゆえに地元戦での苦戦が予測されていたTGR陣営が、昨季に続くフロントロウ独占の結果に……と思われた終了間際。計測5周目にセクター2を27秒484で駆け抜けたキャデラックのリンが、最後の最後で1分28秒901のスーパーラップを記録し平川を逆転。さらにチェッカーラップでは15号車BMW MハイブリッドV8のドリス・ファントールも、自身6周目で1分29秒059とし、2列目3番手へ飛び込むことに。 これでWEC参戦2年目のキャデラックVシリーズ.Rが初のポールポジションを射止め、フロントロウに平川が並ぶ最終リザルトに。背後の2列目は15号車BMWの隣に可夢偉の8号車、そして3列目を6号車ポルシェと35号車アルピーヌが分け合う混戦の予選結果となった。 [オートスポーツweb 2024年09月14日]