「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」スターシェフによるフォーハンズディナー開催
「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」にルカ・ファンティンがエグゼクティブ・シェフとして就任し、15周年を迎えた。2024年はアニバーサリーコラボを多数実施するという。4月に行われた第1回目のディナーをレポートする。 【写真を見る】スペシャルな料理をチェック!
2000年代のイタリア料理事情
「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」はご存じの通り、「ブルガリ銀座タワー」9階にあるリストランテ。その開業は2007年だが、今年、店名にもその名を冠しているルカ・ファンティン(以下ルカ)がエグゼグティヴ・シェフに就任して15周年を迎えるという。15年前といえば2009年か……当時とそれ以前に時計の針を戻してみたい。 日本におけるイタリア料理は1980年代後半に“イタめし”として大ブームを興したが、現地イタリアからのシェフによる店となると……筆者の知る範囲で、草創期の「アントニオ」(1944年に神戸で開業後、東京・高樹町へ移転)、80年代の「カルミネ」(神楽坂・87年開業)、90年代にナポリピッツァで人気を博した「サルヴァトーレ」(中目黒・95年開業)、「エリオ」(半蔵門・96年開業)など、そのどれもが“現地”や、“本物”の味をうたう、ローカル指向の店であった。 そこへ、現れたのがルカである。彼はまず若かった(2009年、当時30歳)。そして、それまでのイタリア人シェフたちがシチリアやカラブリアなどイタリアの南部出身であったのに対し、北部のトレヴィーゾ出身。イタリア料理をご存じの方ならおわかりであろうが、多様な文化が入り混じっているイタリア料理は南北で大きく異なる。また、ミラノのリストランテをはじめ、スペインの革新的な料理を供することで知られる「ムガリッツ」など名店で研鑽を積んだルカの料理は、それまでの誰とも違う、新しきイタリア料理としておおいに注目を浴びた。 それから15年。日本の豊かな食材に魅せられ、ときにイノベーティブに振れたように見えたルカの料理は、それでもなお、イタリアンであるという軸を見失うことなく、確実に進化を遂げてきた。その間には、日本に暮らすイタリア人シェフとして初めてミシュランの星を獲得し、Asia‘s 50 Best Restaurantsの17位に入賞。店名にも自身の名前が冠されるなど、輝かしいキャリアは衆知の通りだ。 そのルカが、「ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のエグゼクティブシェフとして就任15周年を迎えることを記念し、この4月から1年間、ルカと親しい友人、あるいはビジネスパートナーなどとさまざまなコラボレーションイベントを行う予定だという。記念すべき第1回目として4月、シャンパーニュ「ドン ペリニヨン」が世界のスターシェフたちをつなぐ国際的なコミュニティ「ドン ペリニヨン ソサエティ」の紹介により、「レストラン・ル・ムーリス・アラン・デュカス」エグゼクティブシェフ、アモリー・ブウール(以下アモリ―)が来日。スターシェフふたりによるフォーハンズディナーが開催された。 ■ルカ・ファンティンとアモリ―・ブウールの競演 ひと口に“フォーハンズ”といってもさまざまなパターンがあるが、今回はシェフがそれぞれの料理を持ち寄ってコースを構成するスタイル。デザートを含む8皿の料理が、それぞれの手により完成され、交互に運ばれてくる。というのも、ルカは常々フォーハンズなどのコラボベントを主催する際には、ゲストシェフへの敬意を表し、まずゲストがつくりたい料理をヒアリングしてから自分のメニューを考え、コースを構成するそうだ。 今回も、アモリ―が初来日とあって「日本産の帆立やまぐろを使いたい」というリクエストが先にあったのだとか。それを受けて、ルカによる空豆のラビオリや、リゾット、そして魚介の旨味がたっぷりと感じられるアカムツの一皿などは、(人と料理の両面から)イタリアンとしての矜持が強く感じられる素晴らしい料理の数々であった。ペアリングされたドン ぺリニヨンともども、この日集った美食家たちの舌を大いに喜ばせていたのは言うまでもない。 ルカはイタリア・トレヴィーゾ生まれの今年45歳、アモリ―はフランス・パリ生まれの34歳と、生まれも育ちも異なるふたりが真剣に向き合う姿は見ていて楽しく、私たち食べ手にとっては至福の光景であったが、シェフ当人にとっても互いに刺激と学びを得られる一夜であったろう。フォーハンズ、シックスハンズなどとシェフによるコラボレーションは今後ますます盛んになっていくだろうと感じた。 このルカのエグゼグティヴ・シェフ就任15周年を記念したコラボレーションは今後も継続的に行われる予定で、次回6月25日にはベルガモ(イタリア)より、ミシュラン3つ星レストラン「ダ・ヴィットリオ」よりエンリコ・チェレア(通称・キッコ)シェフが来日予定。また8月にはバリ島のブルガリ・リゾートでルカと、2024年のAsia’s 50 Best Restaurantで第9位にランクインした「ラ・シーム」高田祐介シェフとのコラボレーションが予定されている。まだまだ意気軒高なルカの、さらなる進化を期待したい。 ■ブルガリ イル・リストランテ ルカ・ファンティン 住:東京都中央区銀座2-7-12 ブルガリ銀座タワー TEL:03-6362-0555 @bulgarilucantintokyo
文・秋山都 編集・岩田桂視(GQ)