「まさか死んでないよな…」これから日本人を襲う大災害「最悪のシミュレーション」
避難所に帰宅困難者殺到、避難者同士のトラブルも
娘の香織がかつて通った校舎の一角は、ラジオから流れる声を聞き漏らすまいとする人々で溢れていた。最新の被害状況を伝え続けるアナウンサーによれば、耐震性の低い住宅は全壊し、古いビルやマンションも崩れている。木造住宅の密集地域では火災が相次ぎ、いたるところで道路は寸断され、鉄道も運行停止。広範囲で停電や断水が発生しているという悲惨な状況だった。 「あなた!」。聞き慣れた声に振り向くと、避難所の端で両手を振る幸子が目に涙を一杯にためていた。妊娠中の香織は入院先で無事が確認され、一家の心は少しだけ和らぐ。ただ、自宅を失った一家はしばらく避難所での生活を余儀なくされる。この後さらなる悲劇に襲われることになるとはそのときは知るよしもなかった。 首都直下地震の発生翌日、職場や外出先から自宅への帰還が困難になった帰宅困難者が一時滞在施設の場所がわからず、避難所にも殺到した。収容力を超える事態だ。通信の途絶に加え、スマホのバッテリーは切れ、家族らとの連絡が困難になった人々がイライラを募らせる。備蓄の飲用水や食料は限定的で、仮設トイレは衛生環境が悪化。感染症が蔓延することへの不安も広がった。 さらに自宅での避難生活を送っていた人も家庭内の備蓄が枯渇し、避難所に次々と訪れる。支援物資やボランティアの供給には地域でバラツキがみられ、人々のストレスも増すばかりだ。高齢者や既往症を持つ人は慣れない環境での生活に症状が悪化し、避難者同士のトラブルも続発する。
宮地 美陽子(東京都知事政務担当特別秘書)