ロシア参戦で難民はさらに増える シリアは「地獄」化の恐れ
ロシア軍はむしろ政府軍の空爆に加担
そんな中、ロシア軍が空爆を始めたというのが現在の状況です。ロシア軍はシリア政府軍を止めるどころか、政府軍の事実上の同盟軍であり、ISよりむしろ、アサド政権と敵対する反政府軍の拠点に大々的に空爆を続けています。しかも民間施設も標的にしており、民間人に犠牲者が続出しています。無差別空爆を止めるどころか、加担しているわけです。 しかも、ロシア軍が参加したことによって、有志連合がたとえば飛行禁止措置をとることが非常に困難になりました。いくら米軍といえども、ロシア軍と交戦する危険は冒せないからです。 また、ロシア軍の参戦により、アサド政権もまた、有志連合との衝突を警戒する必要がなくなりました。そのため、ロシア軍の空爆と同時に、政府軍の無差別空爆も激しさを増しています。 現在、シリアではロシア軍の参戦によって以前よりも無差別空爆が激しくなっており、有志連合にそれを止める術はありません。今後、空爆だけでなく、地上でも反政府軍エリアに対する政府軍の攻勢が始まるものとみられます。実際、ロシア軍の展開とほぼ同時に、イラン革命防衛隊やイラクのシーア派民兵などがシリアに続々と増派されています。 彼らは民間人の犠牲など気にも留めずに、住居エリアを大々的に攻撃するでしょう。残念ながら、このままではこの国ではさらに多くの住民が殺戮され、文字通り「地獄」化することになります。
■黒井文太郎(くろい・ぶんたろう) 1963年生まれ。月刊『軍事研究』記者、『ワールド・インテリジェンス』編集長等を経て軍事ジャーナリスト。著書・編書に『イスラム国の正体』(KKベストセラーズ)『イスラムのテロリスト』『日本の情報機関』『北朝鮮に備える軍事学』(いずれも講談社)『アルカイダの全貌』(三修社)『ビンラディン抹殺指令』(洋泉社)等がある