ロシア参戦で難民はさらに増える シリアは「地獄」化の恐れ
長引く内戦や過激派組織「イスラム国(IS)」の台頭で混乱が続くシリア。こうした状況から国を離れ、ヨーロッパを目指す難民が増えています。そんな中、ロシアがシリア領内での空爆を開始しました。7日にはカスピ海から巡航ミサイルも発射。シリアへの軍事関与を強めています。さまざまな国や組織の利害や思惑が入り組むシリアへのロシア“参戦”は何を意味するのか。中東情勢に詳しい軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が解説します。 【写真】アサド政権も「イスラム国」も非人道性では同じ?
シリア国民の半分が家を失った計算
9月30日、ロシア軍がシリアでの空爆に踏み切りましたが、それによって今後、ますます難民が増えるものと思われます。どういうことでしょうか? 現在、欧州に殺到して大きな社会問題になっているシリア難民は、内戦のためにやむなく故郷を捨てた人たちです。現在、シリア難民の総数は約400万人。内訳はトルコに約190万人、レバノンに約120万人、ヨルダンに約60万人などです。また、国外に逃れた難民の他にも、戦火で家を追われながらも、経済的理由その他で国内に留まっている避難民が約760万人に達するとみられています。これらの難民・避難民を合わせると1100万人を超えます。内戦勃発前の人口が約2200万人ですから、ちょうど国民の半数が家を失ったことになります。 これだけ凄まじい数にまで膨れ上がった難民たちの生活環境は劣悪です。国連や援助機関のケアが間に合わないからです。そこで行き場を失った難民たちは今、生存のために欧州を目指しています。闇業者に多額の手数料を支払わないとならないため、欧州を目指す難民はまだ比較的経済力のある人々が主流なのですが、その数は数十万人にも及び、現在も増え続けています。 これだけの難民が生まれた最大の理由は「生命の危機」です。とくに武装闘争に参加していなくとも、シリアで生きるということは、日常的に空爆や砲撃に晒され、いつ殺されてもおかしくない状況にあるということです。 また、一部の地域を除き、社会インフラや経済が破壊され、生活していくのも困難な状況になっています。場所によっては、政府軍によって長期にわたって包囲され、食糧が欠乏して悲惨な状況になっている町もあります。