ストレスや不満を抱える母親たちの、心のスキマを埋めるものとは?『恋するママ友たち』著者インタビュー
家事に育児に仕事と、毎日は慌ただしく過ぎていきますよね。夫との関係や子どもの学校のことなど、悩みがつきないという人も多いのではないでしょうか。バタバタとした日々を過ごしていると、疲れてしまったり、ちょっとしたことでイラついてしまったり、寂しくなったり…ふと電池が切れてしまうことも。そんな心を、あなたは何で満たしますか? 【漫画を読む】『恋するママたち 私以外も不倫してた』を最初から読む 吉田いらこさん著の『恋するママたち 私以外も不倫してた』には、誰しも共感できる悩みを抱えた3人のママが登場します。ママたちの心を満たしたのは、夫以外の人との恋愛で…。 この作品を描いた意図とは?著者の吉田いらこさんにお話を聞きました。 ■3人のママに訪れた「恋」の物語 小学3年生の子どもを持つ早紀・美穂・麻衣は、気の合うのママ友グループ。子どもが幼稚園の頃から仲良くしていて、もう6年の付き合いになります。 パート勤務の早紀は、アクセサリー作りが趣味。仕事も趣味も充実しているように見えますが、毎日の忙しさからイライラして夫や子どもにキツくあたってしまいます。 美穂は家事も育児も丁寧にこなしていながら、夫からの心ない言葉や行動にも耐える日々。専業主婦であることに引け目を感じていて、仕事をしている早紀や麻衣を羨ましく思ったりもします。 そして、外で働くことが大好きな派遣社員の麻衣。息子の不登校に悩んでいて、夫との意見の食い違いで夫婦仲も少しずつこじれていってしまいます。 お茶やランチをしながら育児について相談したり、他愛もない話をしたりする仲ですが、お互いに言えない鬱屈した思いを秘めていました。そんな3人に、心が揺れるような出会いが訪れて…。彼女たちがとった行動とは? あなたが彼女たちの立場なら、どうしますか? ■価値観のゆらぎから描き始めた作品 ――まずタイトルが印象的です。「ママ」と「恋」という言葉は、なかなか一緒に並ぶことがないですよね。タイトルに込められた思いを教えてください。 吉田いらこさん:「ママ」が絶対にしてはいけないはずの「恋」をタイトルにすることで、見た人の記憶に残るようになればと思い考えました。実は悩みに悩んで、担当の編集さんに助けていただきました。 ――そんなママの恋をテーマにした本作。描き始めたきっかけは? 吉田いらこさん:子どもの頃からずっと、「結婚したら生涯パートナーと添い遂げるもの」という認識が私の中にありました。けれども、年齢を経て多くの既婚女性と知り合いになるうちに、恋愛に対していろいろな考えを持つ方がいることを知りました。そこで「私の考えってもしかしたら偏っているのかな…?」と自分の価値観がゆらぎ始めたことがきっかけです。 ――ストーリーの構成等はどのように考えたのでしょうか?実際に吉田さんが見聞きしたエピソード・セリフなども描かれていますか? 吉田いらこさん:このお話には、私の周りで見聞きしたエピソードを散りばめています。例えば、麻衣のお話の中で、彼とのやり取りにビジネス用のチャットアプリを使うシーンが出てきますが、これは職場の元後輩が実際に教えてくれました。「LINEは厳しくチェックされるけど、なぜかこういうアプリは大丈夫なので社内の人と付き合うときにオススメです」と…。 ■登場人物に共感してしまう恐ろしさ ――作中には3人のママが登場しますね。1人ではなく、3人の恋模様を描いたのはなぜですか? 吉田いらこさん:色々なタイプの結末を描きたいなと思ったからです。現実では夫にバレて今までの生活が崩壊する人もいれば、上手くやっている人もいますから。そんなリアルさを描きたいなと思いました。 ――リアルさというと、日常を切り取ったようなストーリー展開にも現実味を感じました。早紀・美穂・麻衣の三者三様の恋模様が描かれていますが、どれも劇的な出会いやエピソードはありませんね。 吉田いらこさん:このお話は決して他人事ではなく、誰にでも起きる可能性があることだと思います。育児中の女性は忙しいので、基本的に恋愛どころではないはずです。けれども、ちょっとした不満があったりして心に小さな隙間ができてしまったとき、本当にふとしたことで恋愛が始まってしまう。そういう怖さが日常に潜んでいることを描きたいと思いました。 * * * 本作に登場する3人のママのように、「夫以外の人との恋愛なんて、ドラマの中だけの話」「そんな出会いもないし、暇もない」と思っている人がほとんどではないでしょうか。だけど他人事ではなく、誰もが足を踏み入れてしまう可能性を秘めている…。リアルなエピソードに、そんなことを考えさせられる作品です。 取材・文=松田支信