【社説】「キム・ゴンヒ女史=聖域」認める、存廃の岐路に立つ韓国検察
韓国検察が尹大統領夫人のキム・ゴンヒ女史を第三の場所で非公開で事情聴取したうえ、その過程から検察総長を「外した」ことが大きく波紋を広げている。キム女史が法治主義の例外となっており、聖域として君臨しているとの批判だ。イ・ウォンソク検察総長も22日、「何度も法の下に例外も特恵も聖域もないと申し上げた。しかし、大統領夫人の聴取過程ではこのような原則が守られなかった」とし、「国民に深くおわび申し上げる」と述べた。検察総長が自ら、「特恵と聖域」だったことを告白したのだ。ならば、これは謝罪で済ますべきではなく、正さなければならない。検察がこれを正すどころか、あくまで「キム女史の容疑を晴らす」手順を踏むのなら、検察はその存在理由に対する深刻な問題提起に直面するだろう。 検察は20日、キム女史を青瓦台(旧大統領府)付近であるソウル鍾路区昌成洞(チョンノグ・チャンソンドン)の大統領警護処付属庁舎で聴取した。検察がキム女史を呼び出したのではなく、キム女史が検察を呼び出したと言っても過言ではない。聴取の時間も、ドイツモーターズ株価操作事件とブランドバッグ受け取り事件が各5時間ほどに過ぎない。嫌疑なしとするための名目づくりの聴取ではないかと疑うに値する。 原則捜査を強調してきた検察総長を「外した」ことは、このような疑問をさらに膨らませる。イ総長は22日、ソウル中央地検のイ・チャンス地検長からキム女史の聴取の経緯について報告を受けた際に、イ地検長を強く叱責し、イ地検長は何度も「申し訳ない」と述べたという。イ地検長が尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領を背景にして検察総長の指示を無視したと考えざるを得ない。このことで検察は、「権力」に屈従する組織であることを改めて全国民に示したも同然だ。 イ総長は、「今後、残されている捜査と事件の処分において『すべての国民は法の下に平等だ』という憲法原則が必ず実現されるよう、私のすべての力を尽くす」と述べた。イ総長は以前にもこのような発言を何度も繰り返している。残る任期は2カ月に過ぎない。だから虚しく響くのは確かだ。しかし、この「最後」の約束にはイ総長個人の去就ではなく、検察の存廃がかかっている。検察がこのようなやり方でキム女史を嫌疑なしとすれば、特検捜査を通じた真相究明はもちろん、検察解体レベルの改革要求に直面せざるを得ない。 イ総長が自らの約束を実現するには、キム女史を検察庁に改めて呼び、きちんと取り調べなければならない。キム女史もアリバイ的な検察の聴取で疑惑を払拭できると考えているのなら、それは誤算だ。いつもそうだったように状況はむしろ悪化している。今月26日の尹大統領弾劾請願についての国会聴聞会にも証人として採択されているだけに、キム女史は国民の前で真摯な釈明と謝罪を行うべきだ。 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )