圧巻の演技を魅せた映画『十一人の賊軍』仲野太賀 ギアを上げさせた「大河ドラマ主演」のプレッシャー
幕末を舞台に集団抗争劇を繰り広げる映画『十一人の賊軍』。山田孝之と共にW主演を務める仲野太賀の鬼気迫る演技に心奪われる観客が続出している。 【写真あり】仲野太賀 商店街を手をつないで……あの有名女優と「ラブラブ」ツーショット姿 この作品は、『仁義なき戦い』シリーズなど東映黄金期の礎を築いた脚本家・笠原和夫による幻のプロットを『孤狼の血』シリーズを手掛けた白石和彌監督が60年の時を経て映画化。戊辰戦争の最中、北陸の小藩・新発田藩で繰り広げられた歴史的な事件を元に、名もなき罪人たちが国境の砦に立て籠もって官軍と戦う血湧き肉躍るエンターテインメント大作である。 ◆別の仕事のロケ先に木刀を持ち込み 「太賀が演じるのは、新政府軍と戦おうとしない新発田藩に不満を募らせる直心影流の使い手。家老の命により、決死隊を率いて砦の護衛作戦を遂行する鷲尾兵士郎役です。実は本格的な殺陣のアクションは今回が初めてのこと。クランクインの半年前から稽古を始め、別の仕事のロケ先にも木刀を持ち込み稽古を続けてきました。本人も『賊と呼ばれる者たちの炎のような生き様、戦の果てにある花火のような死に様を、目に焼き付けていただけたら』と今作への熱い想いを語っています」(映画関係者) 今作の撮影は昨年8月から11月まで行われ、そのうち2ヵ月間は千葉県鋸南町の元採石場に砦のオープンセットを築き、吊り橋や大門、本丸、物見櫓、なんと吊り橋の下に流れる川まで作り、酷暑の中、撮影は連日連夜にわたって行われた。映画の終盤、太賀演じる兵士郎の見せ場である鬼気迫る殺陣のシーンがやってくる。 「砦を守ったら無罪放免になるはずの罪人たちが、口封じのために無残にも殺されていく。家老・溝口内匠(阿部サダヲ)の汚い手口が許せずに、たった一人で立ち向かっていく兵士郎。血で刀が滑らないように紐で手と刀をぐるぐる巻きにして縛り、あと一歩のところまで家老を追い詰めるも力尽きる場面は圧巻の一言。これから時代劇俳優としての活躍が大いに期待されます」(制作会社プロデューサー) しかしこの鬼気迫る演技には、ある秘密が隠されている。 ◆大河ドラマの主演を張ってもらいたいと名付けた 「実はこの砦の撮影の最中に、再来年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』(NHK)の主人公・豊臣秀長役を演じることが決定。狂喜乱舞する太賀は、大河ドラマの主演俳優の名に恥じない演技を見せなければと、ギアを二段も三段も上げたと告白しています。あの鬼気迫る殺陣のシーンは、太賀にとって大河俳優としてのプライドを懸けた闘いだったのかもしれませんね」 (前出・プロデューサー) 今年に入って、仲野太賀は朝ドラ『虎に翼』(NHK)でヒロインの夫役を熱演。さらに7月期にはドラマ『新宿野戦病院』(フジテレビ系)に小池栄子とW主演。 映画に目を向けると1月公開の『笑いのカイブツ』、4月公開の『四月になれば彼女は』、現在公開中の『本心』、さらに来月公開される『聖☆おにいさん THE MOVIE』と話題作に出演。 その上、二階堂ふみと共演する主演舞台『峠の我が家』も公演中。快進撃を続ける仲野太賀は、今まさに俳優として大輪の花を咲かせつつある。 「小学校の時、ドラマ『WATER BOYS』(フジテレビ系)に感動したことがきっかけで、主演する山田孝之に憧れ13歳の時、芸能界入り。同い年で仲の良かった染谷将太が’11年映画『ヒミズ』でヴェネツィア国際映画祭の最優秀新人賞を獲得。同じく同級生の菅田将暉がブレイクする中、二十歳を過ぎても中々活路を見出せずにいました。それだけに30代に入ってからの大ブレイク。染谷や菅田より早く大河ドラマの主役を張る。この快挙に本人の喜びもひとしおではないでしょうか」(前出・映画関係者) “太賀”の名前の由来。 それは 「子供には大河に出て、主役を張ってもらいたい。頼むぞという望みを込めて」 父である中野英雄が命名している。やはり芸能の世界に言霊は存在するのだろうか。 文:島右近(放送作家・映像プロデューサー)
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