ハリウッド映画、北米ヒットの傾向は“ファミリー向け” 2025年の新年興行は前年より好調
『ウィキッド』と『モアナと伝説の海2』の熾烈な争いが続く
今週は話題作の公開がなかったため、ランキングに大きな変化はない。もっとも、『ウィキッド ふたりの魔女』と『モアナと伝説の海2』が相変わらず競り合いを続けている(今週は『モアナ』に軍配が上がった)のと、第3位『Nosferatu(原題)』と第7位『ベイビーガール』の興行に注目だ。 『吸血鬼ノスフェラトゥ』(1922年)をリメイクしたゴシック・ホラー映画『Nosferatu』は、公開2週目ながら前週比マイナス39%という堅実な推移、また予想以上のヒットにより、わずか10日間で世界興収1億ドルを突破。“クリスマス公開”という枕詞を抜きに、いまやホラー映画としても稀有な人気作となりつつある。 しかも監督は『ライトハウス』(2019年)のロバート・エガースだから、これは誰でも気軽に楽しめるタイプのホラー映画でも、ユニバーサル・ピクチャーズが得意とする大衆向けのモンスター映画でもない。製作費は5000万ドルと、インディーズ映画にしてはやや高額だが、この勢いを維持できればコスト回収は容易だろう。 A24製作&ニコール・キッドマン主演のエロティック・スリラー『ベイビーガール』は、週末3日間で北米興収449万2499ドルを記録。前週の成績が3日間で449万145ドルだから、上映館をわずかに増やしながら、数字はほとんど横ばい(変化率は1%未満)という珍しい結果となった。 この数字が意味するのは、年末に本作を観られなかった観客が足を運んでいることと、口コミ効果がひそかに奏功していること。Rotten Tomatoesでは観客スコア50%、出口調査に基づくCinemaScoreでは「B-」評価と、わかりやすい観客評価は今ひとつに見えたものの、実際に人々を劇場に向かわせるだけの確かな評判が映画ファンの間で広がっていると考えるべきだろう。日本公開は3月28日。 そのほかトップ10には入らなかったものの、第12位には、デヴィッド・フィンチャー監督の傑作スリラー『セブン』(1995年)の製作30周年を記念した4Kリマスター上映がランクイン。IMAXシアターを含む北米200館で公開され、週末3日間で91万ドルを記録した。日本でも1月31日に公開予定だ。 2025年最初の週末興収は、市場全体で1億550万ドル(推定)。前述のとおり話題作の公開がなかったにもかかわらず、前年比プラス23%という上々の滑り出しだ。新年の累計興収は前年比プラス55%だというから、なんとも幸先のいい年明けである。 ストライキの影響で公開が遅延した作品を含め、今年は話題作が目白押しだ。『アバター』シリーズの最新作『Avatar: Fire and Ash(原題)』や、『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新作『Mission: Impossible – The Final Reckoning(原題)』のほか、マーベル・シネマティック・ユニバースからは新作映画が3本、DC映画も『Superman(原題)』が登場する。 そのほか、『死霊館』シリーズ最新作『The Conjuring: Last Rites(原題)』や『ジュラシック・ワールド』シリーズ最新作『Jurassic World Rebirth(原題)』、さらにディズニーからは『ズートピア』続編も公開予定。『ウィキッド』後編の『Wicked: For Good(原題)』も大ヒットがほぼ約束されている。年間興収90億ドルを突破して、コロナ禍以降の新記録樹立となるか? 北米映画興行ランキング(1月3日~1月5日) 1.『ライオン・キング:ムファサ』(↑前週2位) 2383万ドル(-35.2%)/3925館(-175館)/累計1億6860万ドル/3週/ディズニー 2.『ソニック × シャドウ TOKYO MISSION』(↓前週1位) 2120万ドル(-42.7%)/3746館(-23館)/累計1億8750万ドル/3週/パラマウント 3.『Nosferatu(原題)』(→前週3位) 1320万ドル(-39%)/3132館(+140館)/累計6940万ドル/2週/Focus Features 4.『モアナと伝説の海2』(↑前週5位) 1239万ドル(-34.4%)/3345館(-60館)/累計4億2515万ドル/6週/ディズニー 5.『ウィキッド ふたりの魔女』(↓前週4位) 1020万ドル(-48.4%)/3287館(+110館)/累計4億5075万ドル/7週/ユニバーサル 6.『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(→前週6位) 806万ドル(-30.8%)/2835館(変動なし)/累計4169万ドル/2週/サーチライト 7.『ベイビーガール』(→前週7位) 449万ドル(+0.1%未満)/2164館(+49館)/累計1611万ドル/3週/A24 8.『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』(→前週8位) 267万ドル(-34.6%)/1748館(-117館)/累計1億6886万ドル/7週/パラマウント 9.『Homestead(原題)』(→前週9位) 210万ドル(-31.9%)/1700館(-69館)/累計1747万ドル/3週/Angel Studios 10.『The Fire Inside(原題)』(→前週10位) 123万ドル(-37.2%)/2032館(+26館)/累計712万ドル/2週/Amazon・MGM (※Box Office Mojo、Deadline調べ。データは2025年1月6日未明時点の速報値であり、最終確定値とは誤差が生じることがあります) 参照 https://www.boxofficemojo.com/weekend/2025W01/ https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/mufasa-box-office-beats-sonic-3-1236099395/ https://www.hollywoodreporter.com/movies/movie-news/boxoffice-studio-marketshare-revenue-global-2024-1236098759/ https://variety.com/2025/film/box-office/box-office-mufasa-triumphs-over-sonic-3-1236265686/ https://variety.com/2025/film/box-office/box-office-milestones-nosferatu-100-million-globally-moana-2-950-million-1236265720/ https://deadline.com/2025/01/box-office-mufasa-sonic-first-weekend-2025-1236246038/
稲垣貴俊