台湾有事に備え、態勢強化を進める日米。重視するのは「沖縄・先島諸島」 訓練強化、地元住民に募る不安
今年1月の台湾総統選で、中国が「独立派」と見なす民主進歩党の頼清徳副総統が勝利した。中国は台湾問題を「核心的利益の核心」として、独立の動きや「外部勢力による干渉」を警戒。緊張の高まりが懸念される。 習近平指導部が台湾統一のため武力行使を排除しない方針を示す一方、防衛当局者の間では、中国軍は台湾に上陸する能力などが不足しており、有事は「差し迫っていない」(西側軍事筋)との分析がある。 それでも不測の事態を招く可能性は否定できない。22年8月、ペロシ米下院議長(当時)の台湾訪問に反発し、中国軍が台湾を囲んで大規模な軍事演習を実施した。日本の排他的経済水域(EEZ)にも弾道ミサイルを撃ち込み、与那国島などでは漁業者が操業自粛に追い込まれた。 米軍は、先島諸島の陸自駐屯地を積極的に活用したいと日本側に働きかけている。ただ、防衛省幹部は慎重だ。「中国を抑止する態勢の整備は必要だが、住民感情にも配慮しなければならない。自衛隊の安定的な駐留が最優先だ」
仮に台湾有事が起き、米軍がEABOに基づく作戦を発動して先島諸島に展開すれば、中国軍の攻撃対象となり、住民が巻き込まれる恐れもある。与那国島の飲食店経営者は、自衛隊と米軍の共同訓練の強化にこう漏らした。「台湾海峡の情勢が不安定化する中で、米兵が日常的に島にいることになれば不安だ」