台湾有事に備え、態勢強化を進める日米。重視するのは「沖縄・先島諸島」 訓練強化、地元住民に募る不安
海兵隊は20年3月、戦車を30年までに廃止して対艦ミサイルなどに投資する方針や、EABOに特化した「海兵沿岸連隊(MLR)」の創設を掲げた文書「戦力デザイン2030」を公表。23年11月には沖縄県内の部隊を改編し、ハワイに次ぐ2番目のMLRを発足させた。米領グアムにも設置する方向だ。 ▽米海兵隊トップが有事計画に言及 周辺国との協力も加速させる。23年1月、日米の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)では、南西諸島の施設の共同使用や、自衛隊と米軍の共同訓練の拡充で一致。24年4月10日、岸田文雄首相の国賓待遇訪米に伴いホワイトハウスで行われたバイデン大統領との首脳会談では、南西諸島を含む地域で「同盟の戦力態勢の最適化」が進展していると評価し、共同声明で「この取り組みをさらに推進する」と確認した。 23年2月には、米軍がフィリピン国内で使用できる基地の数を増やすことで米比両政府が合意。米軍にとって「台湾への玄関口」(米外交筋)とされる南シナ海から台湾に接近するための拠点を増やす狙いがある。
米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は23年3月、海兵隊のバーガー司令官(当時)の話として、米インド太平洋軍が島しょ部の戦略的な地点を特定し、複数ある有事計画に書き込んだと報じた。 自衛隊幹部は「米軍がアクセスできる拠点を増やすのは、中国が台湾侵攻を考えた場合、米軍からの反攻が想定される地点を複雑にし、侵攻を諦めさせるためだ」と解説した。 ただ、中国軍が容易に攻撃可能な島々に部隊を展開し、物資や弾薬を補給し続けるのは簡単ではない。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は23年1月、台湾侵攻を想定した机上演習の結果を公表し、MLRについて「戦闘での貢献は限定的とみられ、多くのシナリオで大きな働きをしなかった」と記した。 複数の日米関係筋は補給の課題を認めた上で、危機が起こる前の段階で臨時の補給拠点を設ける「事前集積」という戦術構想を明かした。先島諸島の陸自駐屯地などの活用も念頭に置いている模様だ。「施設の共同使用は不断に検討している」(自衛隊幹部)。「米軍と自衛隊は先島諸島の重要性を理解している」(米軍幹部)。双方は、日米の緊密連携を何度もアピールした。 ▽侵攻の可能性と巻き込まれへの懸念