小泉今日子×松尾潔「おれの歌を止めるな」自分の言葉とノリで、声を上げよう
団塊の世代に「面白いこと」を教わった
──『おれの歌を止めるな』の巻末には、ジャニーズ問題をめぐる、近田春夫さんと田中康夫さんとの鼎談が載っていて、読みごたえがありました。 松尾 最近、よく3人で会うんですが、50代、60代、70代と世代がバラバラなんですよ。今日みたいに同世代もいいけれど、世代が違う組み合わせもまた面白いものですよね。 ──『おれ歌』に収録されたエッセイで、近田さんがジャニーズ問題について語った「いくらなんでも、といのはあるよね」という言葉が、大好きなんです。こう言われると、ジャニーズ問題について詳しくなくても、「ああ、そうかも」と共感できます。 松尾 近田さんって正義感が強いんですよ。 小泉 自分が関心のあることについて、近田さんは誰とでも話したいんですよね。若い頃から音楽活動をしていらして、自分で見てきたものもあるから、ジャニーズ問題も気になったんだと思います。近田さんは本当にお元気でカッコいい。 松尾 ああいう方がいらっしゃると、自分も73歳(近田春夫の現年齢)になるまでは頑張れるなと思います。まあ、その時に近田さんはもっと先に行っているんでしょうけど。「50代あるある」かもしれませんが、この年齢になってくると、子どもの時に漠然と憧れていた大人の方々といまの自分がピントが合って見えて、それがまたいろんな発想を生み出しますよね。 小泉 ちょうど私たちが10代、20代の頃に、面白いことを教えてくれた年上の人たちは団塊の世代でした。20歳近く年上の人たちが、私を子ども扱いせずにいろいろなことを教えてくれたし、面白いところに連れて行ってくれた。「そういう大人にいまの自分はなれているのかな?」って思いますね。 私は、こぐれひでこ・小暮徹夫妻にお世話になっていました。お家へご飯を食べに行ったり、暖炉の火を見ながら、ずっと3人でおしゃべりしたり。こぐれさんちにあったレコードを聴かせてもらって、本も借りてましたね。 近田さんもそうしたなかで知って、「いつか一緒にやりたいな」と思っていて。近田さんがプロデュースなさったジューシーフルーツみたいな音楽をやってほしいな、と思ったら、「いま、おれ、ハウスしか興味がないから」と言われて。「じゃあ、それでお願いします」と(笑)。 松尾 それで名盤『KOIZUMI IN THE HOUSE』ができあがったわけですね。あそこで小泉さんは舵を切ったな、と思いましたよ。