なぜ本田圭佑はハリルジャパンに復帰したのか?
本田が先発から外れてからは、セットプレーのキッカーを井手口が担うことが多かった。もっとも、所属していたガンバでフリーキックやコーナーキックを蹴ることはほとんどなく、残念ながら精度も決して高くはなかった。 一転してプレスキッカーの担い手でもある本田の復帰で、本大会をにらんだ現実的な戦い方も可能になる。本田の復調は懸案事項のひとつだったからこそ、ハリルホジッチ監督は2月に手倉森誠コーチをメキシコへ派遣して、コンディションを確かめさせていた。 会見で言及した「このチャンスをつかんでほしい」という言葉は、ゴールもしくはアシストという、明確な結果をマリおよびウクライナ相手にマークしてほしいというメッセージでもある。 ロシア大会に臨む代表メンバー23人の発表時期に関して、ハリルホジッチ監督は5月30日に日産スタジアムで行われる、ガーナ代表との壮行試合を終えた翌日に設定したい意向を示した。 フィリップ・トルシエ監督に率いられた2002年の日韓共催大会以降は、すべて5月中旬までに23人が決定。国内キャンプと壮行試合をへて、本大会へと臨むスケジュールが組まれてきた。 一転して5月下旬からの国内キャンプからガーナ戦までは、人数にある程度の余裕をもたせたラージグループで臨む。けがで戦列を離れている関係で、今遠征は選外となったMF香川真司(ボルシア・ドルトムント)らは、復帰していればこの段階で試されるはずだ。 さらにはベルギー遠征に招集された大迫勇也(ケルン)、小林悠(川崎フロンターレ)、杉本健勇(セレッソ大阪)のセンターフォワード組が明確な結果を残せなかった場合、実績十分のFW岡崎慎司(レスター・シティー)もラージグループに入ってくる可能性がある。 ザックジャパン時代から日本代表の攻撃陣をけん引してきた、いわゆる「ビッグ3」のなかでいち早く復権のチャンスを手にした本田は、ベンチウォーマーに甘んじ、勝利とワールドカップ切符獲得に貢献できなかったオーストラリア戦の翌日にこんな言葉を残していた。 「一番の収穫は、僕や(香川)真司が出なくても勝てたこと。僕らはもう必要ないんじゃないか、と言われることはいいことだし、本大会を目標とするなかで、この悔しさがなくなったら努力できない。その意味では刺激を受けたことを楽しめているし、危機感を与えてくれたことに感謝している」 捲土重来を期してから半年あまり。反骨心と負けず嫌いの精神を糧に、少年時代から貪欲に成長の階段を駆け上がってきた本田の真価が問われようとしている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)