電通がまとめた媒体別の広告費によると、TVerを含むテレビメディア関連動画広告は令和5年で443億円。4年の350億円から増えた。一方、5年の地上波テレビは1兆6095億円で、4年の1兆6768億円から減った。桁こそ違うものの、地上波テレビが長期的に減少傾向にあるのとは対照的だ。

蜷川常務は「公共性が高く、多くの人に見てもらえるような質の高いコンテンツを作り続けるためにも、地上波テレビの売り上げが減った分を補完できるような存在になっていきたい」と話す。

■ライバル視から変化

みずほ銀行の産業調査によれば、令和32（2050）年には新聞、テレビなどの広告費は全て、インターネット関連の広告費に置き換わると予測される。

こうした危機感はテレビ局にも浸透しており、民放関係者は「局内の雰囲気はこの10年で明らかに変わった。以前は視聴者の共食いを心配していたが、今ではどんな形でも自分たちの作ったものを見てもらえることが大切だと思うようになった」と明かす。

テレビ東京の石川一郎社長は10月3日の定例記者会見で「例えば五輪は昔のように家族で見るのではなく、興味に応じてスマホなどで見る時代になった。視聴環境の変化に応じて対応しなければいけないし、TVerへの認識は各局高まっていると思う」と述べた。（大森貴弘）