【2024 スーパーバイク世界選手権 第7戦】ラズガットリオグルがSBK新記録となる13連勝を達成!
2024年8月9日から11日にかけて、スーパーバイク世界選手権第7戦ポルトガルラウンドがアウトドローモ・インターナショナル・アルガルヴェで行われた。昨年の同サーキットで開催されたポルトガルラウンドでは、アルバロ・バウティスタ(Aruba.it Racing – Ducati)が強力な加速性能を駆使し3連勝を達成。当時ヤマハから参戦していたトプラク・ラズガットリオグルにとって悔しさの残るレースとなった。その因縁のサーキットにBMWのライダーとして戻ってきたラズガットリオグルはSBKの歴史を塗り替える走りを見せた。 【写真はこちら】2024 スーパーバイク世界選手権 第7戦フォトレポート ●ラズガットリオグルがバウティスタ、レイに並ぶ11連勝を達成 レース1のスタート順を決めるスーパーポールでは、ラズガットリオグルがポールポジションを獲得。2番手には今季安定感が光るアレックス・ロウズ(Kawasaki Racing Team WorldSBK)、3番グリッドにはダニーロ・ペトルッチ(Barni Spark Racing Team)が入った。 気温30度、路面温度38度のドライコンディションの中、20周のレース1がスタート。2番グリッドスタートのロウズがホールショットを奪い、ペトルッチのスタートダッシュを防いだラズガットリオグルが2位、3位ペトルッチの後ろにはマイケル・ファン・デル・マーク(ROKiT BMW Motorrad WorldSBK Team)が浮上した。 8番グリッドスタートのレイも2つポジションをあげ6位、一方、6番グリッドスタートのバウティスタはスタートとポジショニングに失敗し、13位まで後退してしまった。 2番手につけるラズガットリオグルが先頭のロウズに序盤から仕掛けていく。ペースのあるラズガットリオグルの前に出したくないロウズはラズガットリオグルの先行を許さない。しかし、4周目のホームストレートでロウズとラズガットリオグルのスリップストリームを利用したペトルッチが一気に2台をかわしトップに浮上した。 ペトルッチを逃したくないラズガットリオグルは翌周のターン1でロウズをパスし、ペトルッチの背後につけチャンスを伺っていく。 調子の良いペトルッチはラズガットリオグルとバトルを演じ、トップを死守。その後方ではラズガットリオグルの僚友ファン・デル・マーク、そしてスタートで大きく順位を落としていたバウティスタが迫っていた。 これまでトップの座をキープしていたペトルッチだったが、残り8周となったターン1でついにラズガットリオグルの先行を許してしまう。さらにファン・デル・マークを攻略したバウティスタにも残り3周となったターン2でパスされてしまった。 トップのラズガットリオグルはこの隙にギャップを広げトップチェッカー。SBK最多タイとなる11連勝となった。2位に見事な追い上げを見せたバウティスタ、3位にはサテライトながら力強いレースを展開したペトルッチが入っている。 ●ラズガットリオグルが新記録となる13連勝を達成 日曜日に行われたスーパーポール・レースでもラズガットリオグルが制し、SBK新記録となる12連勝を達成。レイとバウティスタが保持していた11連勝を塗り替える快挙となった。 2位争いは激しく、ペトルッチ、ロウズ、ファン・デル・マーク、ブレガ、バウティスタの5台によるバトルが繰り広げれ、ペトルッチが2位、3位にはファン・デル・マークとのバトルをわずか100分の2秒差で制したロウズが入っている。 レース2は気温26度、路面温度34度でこれまで同様ドライコンディションの中レースがスタート。 レース2ではラズガットリオグルがポールからスタートを決めホールショット。ファン・デル・マークもスタートを決め2位に上がり、今季初となるBMWのワンツー体制が構築された。 このBMWの2台にロウズが喰らいつき、3台による激しい戦闘争いが繰り広げられる。さらにはブレガ、バウティスタのドゥカティワークスの2台も続き、ここ数戦では見られなかった複数台による激しいトップ争いが行われた。 ファン・デル・マーク、ロウズがトップの座を奪い合う中、6周目にラズガットリオグルがロウズをとらえ、トップに浮上。 しかし、ラズガットリオグルはロウズをオーバーテイクした際に、左フロントのウイングが脱落。このアクシデントの影響か、その後ラズガットリオグルは集団から抜け出すことができず、逆に2位に浮上したバウティスタの接近を許してしまった。 ラズガットリオグルの背後につけたバウティスタ。残り5周のターン5でラズガットリオグルがブレーキング時にクリップにつけないところを、バウティスタがクロスラインでオーバーテイクを試みるも、バンク角が深くなりすぎてしまいまさかの転倒。 バウティスタはその後レースに復帰するも19位に後退してしまった。予想外の形でトップの座を守り切ったラズガットリオグル。しかし、その背後にはブレガが迫っており、厳しい戦いは続く。 ブレガは残り4周のホームストレートでオーバーテイクを試みるも、続くターン1ではラズガットリオグルの強烈なブレーキングにより前に出ることができない。 ドゥカティワークスの2台による猛追もなんとか抑え切ったラズガットリオグルが100分の3秒でトップチェッカー。激しいバトルを制し新記録となる13連勝を達成した。 ウィーク中に体調を崩し、熱があったブレガ。万全な状態でもフィジカルに厳しいアルガルヴェを最悪のコンディションながら週末を戦い抜いた。レース2では優勝まであと一歩の2位で表彰台を獲得し、ルーキーながらランキング2位の座を守っている。 3位にはロウズが入り、今大会は3レース中2度の表彰台を獲得。ランキング4位ながらも3位のバウティスタが転倒したことでその差はわずか10ポイントにまで接近している。 2023年シーズンのアルガルベでは持ち味のブレーキングを駆使し、レースの大半をリードしていたラズガットリオグル。しかし、バウティスタとドゥカティの暴力的との言える立ち上がり性能と直線スピードにより優勝を奪われてしまった苦い過去がある。 ライダーがどうすることもできない領域で優勝を奪われたラズガットリオグルは、悔しさのあまり、チェッカー後にはウインドスクリーンを叩き割り、涙を流した。 そんな彼が今季、BMWに移籍し、破竹の勢いで連勝を重ねていった。そして1年前に悔し涙を流したポルトガルの地で新記録となる13連勝を達成。しかも、昨年マシンの性能差を見せつけられたドゥカティとバウティスタとのバトルを制しての勝利は格別だったことだろう。 しかし、ここにきてラズガットリオグルの優勝は独走によるものではなく、ライバルたちとの激しいバトルがあっての薄氷の勝利。ポイント差は大きくなったが、シーズン後半戦では前半では見られなかった激しい優勝争いが待っているかもしれない。今シーズンもまだまだ見逃せないレースが続きそうだ。 次戦は2024年9月6日から8日にかけてフランスグランプリがマニクール・サーキットで行われる。
河村大志