地方ほど「不便だから」で運転継続…“人生100年時代”高齢ドライバーの事情と現状 必要な1人1人の選択
受講者からは、「車がないと生活できない」という本音も聞こえてきた。 男性(80): 「(Q免許返納を考えたことは?)考えたことないよ。東京ならともかくとして、岐阜は車がないとだめでしょうね」 こうした実情は、地方ほど色濃くなる。内閣府の調査では、免許返納で「不便を感じる」と答えた人の割合は、地方に行くほど高い割合となった。「買い物」や「通院」がしにくいといった、生活の悩みが大半を占める。
代わりの足となる路線バスは、2022年度までの15年間で2万キロ以上が廃止された。
高齢者による運転免許の自主返納は、池袋での暴走事故があった2019年をピークに減少傾向にある。
■免許返納を娘が説得「ブレーキを踏むのが遅い」
愛知県津島市で1人暮らしの76歳の鈴木さん(仮名)は、足の関節が痛み、歩くのも一苦労だ。日常の買い物には車の運転が欠かせない。 鈴木さん(76): 「事故があってからでは遅いから『もうお母さん乗らないほうがいい、乗らないで』って言われている。でも不便だから、津島は」
車で1時間ほど離れた場所で暮らす50代の長女・ヨシエさん(仮名)は、鈴木さんに運転を控えるよう説得を続けてきた。 長女・ヨシエさん(50代): 「やっぱり人に迷惑をかけるのが一番怖いなと思っていて。そうなる前に運転はやめたほうがいいんじゃないって、車検が来る度に話しています」
ニュースでシニアドライバーの事故を見るたびに不安が募るヨシエさんは、鈴木さんの運転に、助手席で肝を冷やした経験があるという。 長女・ヨシエさん(50代): 「ブレーキが遅い、踏むのが遅いと感じます」 鈴木さん(76): 「私は早めにブレーキしている。すーっと止まりたいの」 長女・ヨシエさん(50代): 「乗っている方はそうは感じなくて、ちょっと怖い」 鈴木さん(76): 「怖い?ふーん」 長女・ヨシエさん(50代): 「ちゃんと止まってくれるんだけど、最終的には。ただ、ブレーキを踏むのが遅い」 鈴木さん(76): 「早めに踏んでいるんだけどなぁ」 鈴木さんは、生活のために、免許の自主返納は考えていないという。大切な家族だからこその説得に、心は動くのだろうか。