地方の「教育困難校」で起きているリアルな問題。教育現場の課題も昔からがらりと変化している
「教育困難」を考える本連載。今回お話を伺ったのは、岡山大学で准教授として教鞭をとる中山芳一先生です。岡山県を中心に郊外に足を運び、小学校現場を見続けている中山先生は「非行や破壊行為だけではない、目に見えない『教育困難』が増えることで、教育現場は困惑している」と語ります。小学校の教育現場を取り巻く教育困難な状況について15年前に「教育困難」校を卒業した濱井正吾氏が伺いました。 子どもの非認知能力をはじめとするさまざまな教育学の研究をする傍ら、全国の学校現場を見続け、時には自身も教壇に立って子どもたちに指導する岡山大学准教授の中山芳一先生。
授業についていけず、子どもたちが荒れている「教育困難」な現場状況も、過去と現在では様相が変わっているからこそ、つねに教育現場を見ることが大事だと中山先生は考えます。 数々の教育現場と向き合う中山先生から見て、いわゆる「教育困難校」と呼ばれる学校は、今どのような問題を抱えているのでしょうか。 ■かつて教育現場が抱えていた問題 本題に入る前に、かつて教育現場が抱えていた問題を振り返りましょう。 1980年代に流行ったドラマ作品では、学校の先生たちや、家庭環境に対する生徒たちの反抗心・反発心が描かれていました。
この当時の日本の教育は、アメリカの影響を受け、「詰め込み型教育」が主流になっていました。勉強についていけない子どもたちは、容赦なく切り捨てられた時代。そんな子どもたちの抱える苦悩が、80年代に流行ったドラマ作品からも浮かび上がります。 1990年代になると、今度は「お受験ブーム」が到来。教育機関がどんどん増えていき、「いい学校に入ってほしい」という親の願いから、子どもたちはひたすら勉強に打ち込むようになります。2000年代初頭には、都心部を中心に幼稚園や小学校から子どもを受験させる家庭が増えるようになりました。
お金がある家庭は、受験をさせていい学校に行かせようとする一方、金銭的に余裕がない家庭は受験すら難しい。場合によっては校内暴力が蔓延しているような学校に行かせざるをえないケースもあります。 かつてはオンライン授業もなく、学校に行くのが当たり前だった時代。目に見える校内暴力が問題となり、先にも述べたようにドラマの題材として扱われることもありました。 一方で現代社会では、詰め込み型教育は見直されつつあるものの、教育を巡る問題はより複雑さを極めています。