韓国・尹錫悦大統領「夫人の疑惑」謝罪会見のシラケ具合 澤田克己
夫人には、株価操縦事件に資金提供者として関与した疑惑も指摘されている。そして、疑惑そのものより問題なのは、きちんとした説明がなされていないことだ。釈明に釈明を重ねてきたこともあって、尹氏夫妻の信頼度は地に落ちている。部外者からは妥当に見える説明をしても、もはや韓国世論を納得させるのは難しいのではないかと思わせるほどだ。 検事時代の尹氏を取材し、夫人もよく知る韓国紙の記者は1カ月ほど前に会った際、「信頼を取り戻すために必要なことは明確だ。検察でも、特別検察官でも構わないから、司法プロセスに任せるしかない。でも尹氏は夫人に頭が上がらないからねぇ」と話していた。まぁ、そんな感じなのである。 ◇「陸女史」まで持ち出して… 2時間20分におよんだ記者会見への反応は散々だった。尹氏を支持する論調を展開してきた保守紙・朝鮮日報の社説は一定の理解を示したものの、同じ保守系の新聞でも中央日報の社説は「『とにかく謝る』しか記憶に残らない尹大統領の記者会見」、東亜日報の社説は「『とにかく謝る』『陸女史も』…当惑させられた140分の会見」と手厳しかった。 「陸女史」というのは、朴正熙(パク・チョンヒ)元大統領の妻、陸英修(ユク・ヨンス)夫人のことだ。独裁者だった夫に庶民の不満などを伝える「家庭内野党」の役割を果たしたとされ、「国母」と慕われた。尹氏が自らを支える夫人の献身ぶりを強調しようと陸氏の名前を持ち出したことで、「陸氏は、庶民生活に目を配れと夫に進言した。与党の公認候補を誰にしろなどと言ったことはない」(進歩派の記者)という批判が噴き出したのだ。 記者の質問をさえぎって話し始めたり、司会を務めた報道官に向かって「あと1問程度にしよう。のどが痛くなってきた」とぞんざいな言葉で語ったりという、記者会見での尹氏の態度も批判された。 世論調査会社・リアルメーターが直後に実施した世論調査では、大統領の記者会見に「共感する」と答えたのは27.3%、「共感しない」が69.8%だった。深刻なのは、保守政党の伝統的支持基盤である慶尚北道地域ですら「共感」が45.6%で、「共感せず」の52.2%を下回ったことだ。