2014年、「就職氷河期世代」は変わらない選択をしたのか?
1990年代中ごろから2000年代中ごろまで、「就職氷河期」というものがあった。当時は、学校を出ても思い通りの就職をすることは難しく、不本意な就職を強いられ、人によっては卒業して非正規の仕事についたりもした。いまや、「就職氷河期世代」はだいたい30代半ばから40代半ばあたりになっている。もはや結婚適齢期をすぎ、女性の場合は「高齢出産」の年齢になっている。2014年の総選挙で何か変わったのだろうか? 彼らは言う。「昔と変わらない」「未来も変わらない」。
就職氷河期世代の苦悩
日本の人口を維持するためには2020年に1.6、2030年に1.8、2040年に2.07の出生率が必要だと昨年政府がまとめた人口減対策の「長期ビジョン」は述べている。しかし、第二次ベビーブームの子どもたちが「就職氷河期世代」となり、その結果未婚率が上昇し第三次ベビーブームは起こらず、もはや少子化社会の中で育ってきた世代の人たちが出産を担うようになっては、人口回復は容易ではない。 内閣府がまとめた少子化対策の調査によると、未婚の男女は「給料を上げることで結婚を後押ししてほしい」という考えを持っているとのことだ。もう若くもなくなってしまった氷河期世代が結婚して、子どもを持つことはあまりにも難しい。 そんな中、麻生太郎財務大臣は昨年の総選挙の応援演説で、社会保障費に関して「子どもを産まない方が問題だ」と言った。子どもを産めない社会を政治家がつくっておきながら、言いかえると氷河期世代以降の若者の貧困を放置しておきながら、そういう。
「氷河期世代はなかったことにされる」
いまはなくなってしまった朝日新聞社刊行のオピニオン誌『論座』2007年1月号に「『丸山真男』をひっぱたきたい──三十一歳、フリーター。希望は、戦争。」を発表し、その論文をもとに『若者を見殺しにする国』(朝日文庫)をまとめた赤木智弘さんは、こう述べる。 「あの論文を発表して以降、世の中は全く変わっていない」。特に氷河期世代にとって重要だったのは、東日本大震災だという。「それまでは『持っていない人』の対策が問題とされていたが、『持っている人』の対策が当たり前になった。『持っていない人』に分配するということが忘れられた」。そして「氷河期世代はなかったことにされる。いつか死ぬというのは社会的な合意があるのでは」という。 埼玉県の会社で働いている30代の男性は、「未来に希望は感じない」という。暮らし向きに関しても、転職したため長時間労働がなくなったものの、「昔と変わっていない」と語った。神奈川県在住の40代男性は、「就職氷河期世代の現状がこのまま続くとは思っていないものの、解決の道筋を示せているかどうかもわからない。目指すやり方を間違えていることを言っている人も多い」という。 先日の総選挙に関して赤木さんは、「景気がよくなっているという指標として株価や新卒内定率が採用されている。新卒がよくなったからといって、氷河期世代とは関係がない。不況によってものを得る機会がなかった人に対するケアがない。これまで通り権利を持っている人に分配をするということを示した選挙だった」と言う。 そして昨年の総選挙についてこう総括した。「いままでやっていたことが変わらず、変わらないことを選んだ選挙だった。(政治は)何を変えていいかわからないし、変える気もない」。 神奈川県在住の40代男性も、「選挙前の予想と変わらなかった。自民が勝ったことで経済政策への信任はされた。その中で次世代の党といった極右勢力が票を伸ばさず、世の中全体は日和見だ」という。 確かに、総選挙の獲得議席数は、各党とも大きく変わることがなく、次世代の党が減少し、共産党が増加しただけだった。「変わらない」ことを選んだのだろう。世の中が「変わらない」ことを志向し、その中で氷河期世代の置かれた状況も2015年になっても変わらない。「希望」なき社会に、氷河期世代は生きる。 (ライター・小林拓矢)