富士フイルム、DX逆行の「チェキ」 売上高1500億円前倒し達成
富士フイルムが手掛けるインスタントカメラ「チェキ」がBtoB(企業向け)の分野でも支持を広げている。SNSの普及や昨今のレトロブームを追い風にチェキが若年層の心をつかみ、世界的な人気に。現在は「推し選手」や「推しキャラ」と一緒に撮影するイベントを通じて、プロスポーツ企業や商業施設などとのコラボも拡大している。取引企業からは、写真に添付されるQRコードを利用した広告へのアクセス率やアンケート回答率が高いと評判だ。 【関連画像】選手とツーショットのように撮影ができる 「推しの選手とツーショットのように撮れてうれしい」。5月下旬に埼玉西武ライオンズが試合前に実施したチェキイベントに参加した20代女性は意気揚々と話した。 このイベントに実際の選手が登場したわけではない。球団が使用したのは富士フイルムが手掛けるアプリ「INSTAX Biz(インスタックス ビズ)」。発売から25年を迎えたチェキで初の企業向けサービスだ。 利用者側が任意の画像ファイルを合成したテンプレートを作ってスマートフォンで撮影すると、無線でつながる専用プリンターで印刷できる。スポーツ選手やキャラクターなどと、ツーショットのような写真を作れることが特徴の1つとなっている。 イベントではスーツや私服風の衣装を着用した埼玉西武ライオンズの選手らとツーショットように撮影できるテンプレートが使用された。ファンは自分の「推し選手」のテンプレートを1つ選択し、撮影後はすぐにプリント。思い出の1枚を手軽に残すことができる。 ●チェキ、レトロブームで人気再燃 1990年代後半から2000年代初頭にかけて女子高校生を中心に大ヒットしたチェキは、デジタルカメラやスマホの台頭で一時下火になったものの、近年は若年層を中心に人気が再燃している。アナログ感やレトロで味わいのある写真がスマホ世代にとって新鮮に映るためだ。若年層人気を追い風に、チェキは21年度から23年度にかけて3期連続で過去最高の売り上げを更新している。 チェキ人気を受けて、最近では若年層をターゲットとするイベントでも広く使用されている。「INSTAX Biz」は22年9月のサービス開始以降、マレーシアやスペインなど60カ国以上に広まり、直近約1年間で1000種類以上のオリジナルテンプレートが使用された。イベントを企画した埼玉西武ライオンズの担当者は「球団として10~20代のファン拡大は課題。昨今の『推し活』ブームもあり、若い人に選手をより好きになってもらうきっかけとしてもチェキとの親和性は高い」と話す。