地域の繋がりを見直す「地域運営組織=LMO」最大助成金600万円 大きな資金でみんなが楽しむ 広島市
広島ニュースTSS
地域の繋がりを見直す動きに注目します。 先月、広島市安佐北区で「木と食の里まつり」というイベントが行われました。住民だけでなく企業も一緒になって人と里のかかわりをつぐむことをコンセプトにしています。 しかし、少子高齢化や単身世帯の増加などで「町内会」や「子供会」といった地域を支える活動の担い手不足は深刻な状況です。 そうした地域のコミュニティを支えるために2022年から広島市が取り組んでいるのが地域運営組織「ひろしまLMO(エルモ)」です。 この「LMO」とは地域運営組織の略称で、社会福祉協議会や町内会などが中心となって学校や企業など様々な団体と連携し課題解決に取り組んでいこうとするものです。 一番の特徴は「自由度の高い助成制度」を活用し、事務所の家賃や運営スタッフの給料も支払うことができ、最大で年間600万円が交付されます。 その「LMO」の現状を取材しました。 <VTR> 広島市安佐北区・大林学区。 2014年に起きた「広島土砂災害」では、住宅34棟や生活道などが大きな被害を受けたものの、元々、地域の結びつきが強かったこともあり、避難や救助が素早く行われ、この地区においては人命にかかわる被害はありませんでした。 しかし、そんな大林学区でも少子高齢化は進み、地域活動を支える将来の担い手不足は否めません。 【LMO大林・坊聰彦 会長】 「地元でも、緩やかな各団体、地域のグループが連携し合うというシステムができてたんですよ。そこに広島市の方からLMOという提案があって『あ、これはもう我々がやってこうとしていることに近い!』ということなので『やりたい』という風に思ったんですよ」 大林学区は2023年に、いち早くLMOを設立し、全世帯およそ1千世帯で住民アンケートを実施しました。 その結果を受け、赤ちゃんから高齢者まで幅広い世代が気軽に集うことができるコミュニケーションスペースを設置しました。 強力なサポートをしたのが地元の企業トーホーの山仲巌社長です。 所有する建物を無償で提供しました。 【トーホー株式会社・山仲巌 社長】 「僕らも頑張ってやってるというよりは、自然体で地域の皆さんが、こんなことやりたいんだ。ということに対して、お応えしてるという感じですかね。僕らも地域があって仕事ができてるし、地域が活性化というか、いきいきしてるほうが、ウチの社員の皆もいきいきするでしょうし」 地域と企業が一体となったコミュニティづくりです。 今年10月、工場内にオープンしたのがコミュニケーションスペース「ルリえん」。 会場の壁に作った大木は利用者の意見や感想といった声を栄養に育っていきます。 【ふるさと学舎・秦野英子 代表理事】 「挨拶が交わせて、顔を知ってる人間関係が徐々にできてる感じです」 目標は地域の人が自分たちで運営することだと言います。 【ふるさと学舎・秦野英子 代表理事】 「誰かがコーディネーションするのではなくて、ここに集まれば、誰かがいるよっていうところで、したいことをするっていうような自主的な活動でないと持続可能にはならないので」 【LMO大林・坊聰彦 会長】 「こういうイベントを組むと若い方が『何かあったら手伝わせてくださいよ』という声を聞きます。それはやっぱり嬉しいですね。若い方が定住して、地元の企業なんかに勤めて、また地域に貢献するといういい関係ができると、地域が活性化できるだろうし、また住んで良かった町になるんじゃないかなと」 この日、佐伯区五月が丘で行われたのは、住民が自ら地域の課題をどう解決するかを考えるワークショップです。 地域の課題は様々で、将来を見据えた街づくりには自由度の高いLMOの制度は魅力的だといいます。 そこで、既に安芸区中野東でLMOを立ち上げた先輩グループに話を聞いて学ぶことにしました。 【佐伯区五月が丘からの参加者】 「若い方々は現状でも各団体さんに入られている状況なんでしょうか、逆にそういったところを盛り上げるために何か工夫をされたりとか、そういったことがありますでしょうか」 【ほことり総合企画LMO・原田陸三 専務理事】 「みんな仕事持ってるんですよ。何人要るんね?というような状況で、足りんのなら、ここへ応援を頼もうか、ウチの方から応援頼もうか、というような」 地域の担い手不足という同じ悩みを持つ者同士…、課題解決に向け協力します。 【ほことり総合企画LMO・原田陸三 専務理事】 「LMOというのは補助金(助成金)の額が600万円と大きな金額なんですよ。大きな資金で皆さんに楽しんでもらうと、これが一番大事ですね。『賑わい創出、楽しい明日へ』というのがキャッチフレーズなんですが、皆さんがそういった喜んでもらうことを楽しみにやっとります」 【五月が丘地区社会福祉協議会・津丸俊二 会長】 「一人暮らしの方、あるいは、また共働きで困っている子どもたちを、もういっぺん元気が出るような、そういう町づくりにするために、LMOで出てきたお金をどのように使ったらいいのか、どういう行事をやったらいいのか、そういったことの参考になったかなという風に思います」 【ほことり総合企画LMO・原田陸三 専務理事】 「人が動けば町も変わりますよ、それは実感しとります。ぜひ、やってほしいです」 持続可能な地域づくりを目指してメンバーの奮闘は続きます。 <スタジオ> この「ひろしまLMO」 先駆的な取り組みとして全国の自治体からも問い合わせが多いということです。広島市では140ある小学校区単位での設立を想定していますが、スタートからわずか2年程ですが、過半数を超える72の地域で「LMO」が動き始めているということです。 匹田さん、ますます盛り上がっていきそうな、そんな期待感もありますね。 【コメンテーター:広島大学大学院・匹田 篤 准教授】(社会情報・メディア論が専門) 「そうですね。防災にしても、そして子供会、祭り、治安、見守り、高齢者の見守りとか、地域の活動ってたくさんあるんですけれども、毎回、みんな同じ人がやっているという。最大の問題はそこにあると思うんですね。それに対して、こういう小学校区を単位とした活動になってると思うので、小学校卒業したばかりの中学生、高校生をどうやって囲い込むか、もういっそのこと役員に迎え入れるぐらいのことでやってみるっていうのは、次の手段としていいと思いますね」 そうした活動が地元愛の醸成なんかにも繋がるのかもしれません。
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