刑事告訴で裁判は開かれる? 「鳥越氏vs.週刊誌」で誤解されていること
東京都知事選に立候補し、選挙戦のさなかに週刊誌に過去の「女性問題」を報じられた鳥越俊太郎氏(76)。7月下旬にこのスキャンダルを報じた2誌に対し、「記事は事実無根」として東京地検に相次いで刑事告訴しました。鳥越氏は結局落選しましたが、ネット上では刑事告訴が持つ意味合いについて、「鳥越氏の女性問題は裁判でこそ決着がつく」といった誤解が今も一部に根強いようです。 【動画】都知事選 鳥越俊太郎氏、力及ばず「申し訳ない」
記事の「真実の相当性」がポイントに
まず時系列的にこの間の出来事をおさらいすると、鳥越氏は7月14日の告示直前に4野党統一候補として出馬を表明しました。同氏の「女性問題」をめぐってまず火の手を挙げたのは週刊文春でした。 同誌は7月21日、女性の夫の証言をもとに鳥越氏のアカデミック・ハラスメントに近い性的疑惑を4ページの記事にして発売。同28日には週刊新潮が過去に女性本人に行ったインタビューをもとに鳥越氏の性的行為に関する疑いを報じました。 これに対して鳥越氏側は両誌をいずれも雑誌発売日に名誉棄損罪と公選法違反罪(選挙妨害)で東京地検に告訴しました。 名誉棄損罪については、両誌とも都知事選に出馬した人物の記事なので「公益性」などはクリアしているでしょう。問題となるのは、記事の「真実相当性」、つまり記事内容が真実であると信じるに十分な取材を行ったか否かです。 公選法違反罪についても、過去の判例などからみて、記事の内容が真実とするならば選挙妨害には当たらず、こちらも「真実相当性」がキーポイントとなります。
起訴した場合のみ裁判が開かれる
ネットユーザーの一部が誤解をしているのは、刑事告訴すれば必ず裁判(公判)が開かれると思われていることです。公判が開かれるのは、今回の場合で言えば東京地検が文春、新潮の嫌疑を認めて起訴した場合のみです。 仮の話ですが、今後、鳥越氏側が告訴を取り下げることや告訴不受理も予想されます。「真実相当性」の判断によっては嫌疑なし・嫌疑不十分で不起訴もあります。そうなった場合は当然のように裁判は開かれません。 捜査側に判断を委ねず、自ら公の場で文春、新潮による名誉棄損や選挙妨害を明らかにしたければ、民事訴訟による損害賠償請求があります。この場合、争点の絞り込みなど提訴までの準備に多少の時間は要しますが、刑事告訴とは違って必ず裁判が開かれ、証言や証拠が公の場に提示されます。