【広島好き】高速化が進むプロ野球界にあらがい、13年連続一軍登板の通算80勝の野村祐輔が現役引退
球速の高速化が進む中、球の切れと制球力でプロ野球の世界を生きてきた。広島が27日、野村祐輔が今季限りでの現役引退を発表した。210試合登板で80勝64敗、防御率3.53。1年目から13年連続で一軍登板を果たした。6年連続V逸となったシーズンに、3連覇戦士がまた1人、ユニホームを脱ぐ。
野村は広陵から明大をへて、11年ドラフト1位で広島に入団した。1年目から先発ローテーションの一角を担い、9勝11敗。リーグ2位の防御率1.98を残した。当時は140キロ台中盤から後半の直球に、多彩な変化球を交えて打者を手玉に取った。16年には最多勝と最高勝率のタイトルを獲得して、リーグ制覇に大きく貢献。18年には開幕投手も任された。
18年までの3連覇に貢献してきたが、一方で17年に腰を痛め、18年には背中の痛みから離脱を味わった。度重なる負傷は球速にも影響した。とはいえ、球速を上げることを求めても限度がある。球速を求めて長所である球の切れや制球力が落ちては本末転倒だ。野村が選んだアプローチはこうだ。
「全部、真っすぐに見えて欲しい」
直球を磨いてほかの球種と緩急差を出すのではなく、カーブを除いたほかの変化球が直球の軌道に近づくことを求めた。複数の球種を直球と同じ軌道から変化させる“ピッチトンネル”の精度を追い求めた。カットボールやスライダー、ツーシームと左右の変化球を両サイドに徹底して投げた。
直球に対する探究心がなくなったわけではない。技巧派にとっても、投球の軸は真っすぐ。投球技術を磨きつつ、直球にこだわり続けた。
速さはなくても、強さは出せる。右足でプレートを踏み、両手を上げてから左足を上げ、そして右腕を振るーー。限られた投球動作の中でも「体を大きく使う」意識を体にたたき込んだ。登板前のブルペン投球は、ラスト1球は必ず、打者のベルト付近への直球だった。
22年シーズンの初登板となった6月10日西武戦での全104球のうち140キロ超を計測したのは1球しかなかったが、それでも白星を手にした。今季初登板となった8月2日中日戦では、最速は139キロにとどまった。それでも同じ軌道から左右に曲げる変化球に、球速を落としたチェンジアップ、カーブで直球を引き立てた。5回6安打を浴びながら、無失点。勝ち星は得られなかったものの、粘投でチームの勝利に貢献した。