2026年、バリ島にユージーン・スタジオの美術館が開館。設計はインドネシアを代表する建築家、アンドラ・マティン。
2026年、バリ島南部、森と海に囲まれた立地に、寒川裕人/ユージーン・スタジオの常設美術館が誕生することが発表された。 現代アーティストの寒川裕人/ユージーン・スタジオが、常設美術館の地として選んだのは、インドネシア・バリ島の世界遺産一帯の麓──海と緑に囲まれた場所だった。バリ6大寺院のひとつとして知られるタナロット寺院にもほど近い、スピリチュアルなロケーションで、「自然との共生」をテーマとした、サステナブルな美術館を標榜する。
設計を手がけるのは、アガ・カーン建築賞を受賞したインドネシアを代表する建築家のアンドラ・マティンだ。1ヘクタール以上のエリアの中に約3,000㎡もの敷地面積を有し、その広大な敷地内のすべての樹木を伐採せずに保存。自然環境への影響を最小限に抑え、建築が一体となった空間を生み出していく。
古典的なバリの村の建築哲学にインスパイアされたデザインは、寒川との対話の中から生まれたものだ。村の中心であり集合場所としての機能を持つ「ナタ」と呼ばれるオープンなランドスケープを中心に配し、その周囲にギャラリースペースを展開。ファサードには地元の職人の手仕事によるテラコッタレンガを用い、床材にはバリの石を使用する。
常設展示には、寒川の代表作である《海庭》シリーズや《Goldrain》、《Light and shadow inside me》などの絵画やインスタレーション、さらに建築一体型の新作などが予定されている。 「哲学とリアルな場所、どちらもが必要です。訪れた人のなかの1人が、何かを考える機会を持つことができれば、それが世界を変えることにつながるかもしれないと期待しています」(寒川)
2024年内に着工がスタートする〈Eugene Museum〉は、寒川の創作の根底にあるコンセプトである共生、そして「新しい海」を体現し、アップデートしていく、壮大な作品でもある。大自然に抱かれたスピリチュアルな地で、現代アートを堪能できる新たな聖地となりそうだ。
text_Aya Hasegawa