ANAが宇宙飛行士を訓練 「心理面」磨くビジネスに【WBS】
飛行機のコックピットのシミュレーターに乗っている2人。JAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙飛行士候補者です。いまANAで、ある訓練を受けています。航空会社が宇宙飛行士訓練を担う狙いを取材しました。 東京・大田区にあるANAの巨大な訓練施設「ANA Blue Base」。ここで公開されたのはJAXAの宇宙飛行士候補である諏訪理さんと米田あゆさんの訓練です。 コックピットを再現したシミュレーターの中で行われたのは、操縦の訓練ではなく、心理面の訓練です。エンジンや天候など、様々なトラブルに対して2人が、管制官役などから情報を集め、話し合いながらベストな対策を導き出します。コミュニケーションやチームワークなど、宇宙飛行士に欠かせない力を磨きます。 実に15年ぶりに行われている宇宙飛行士候補の訓練。去年4月から始まり、トヨタ自動車が月面探査車について講義するなど、民間企業が訓練に協力しています。心理面の訓練は、公募を経てJAXAがANAに委託。民間企業に訓練を本格的に委託するのは初めての試みです。 「日本としても宇宙産業を活性化していこうと。官民学が協力して、いろいろな課題を解決していかなければならない」(JAXA宇宙飛行士運用グループの阿部貴宏さん) 26日間に及ぶANAでの訓練。早ければ10月の宇宙飛行士認定を目指す2人は次のように話します。 「宇宙ステーションや宇宙機でも似たような状況があった時に、チームの人たちとどう協力してベストあるいはベターな選択をしていくのか。直接的にここで学んでいるスキル・経験が役に立っていくのかなと思っている」(諏訪理さん) 「すごい数の飛行機が毎日飛んでいて、だからこそ教訓や事故もあった中で、そこから絶対学び取らなければならない知識の蓄積がある。それを宇宙に生かす意味で学ばせてもらっているのはすごく大きい」(米田あゆさん) ANAは今回の訓練に使うシミュレーターを約20台保有。 「通常、運航乗務員の飛行訓練に使用している。エンジンが壊れる、油が漏れるといった状態や、天候が非常に悪くてほとんど見えない状態で着陸する状況を模擬できる」(ANA訓練業務部の鈴木直也部長) JAXAからの訓練の引き受けをきっかけに、企業向けの「心理」研修プログラムとして販売するビジネスを拡大する狙いです。 「あらゆる教育や訓練に適用できるのでは。特に建築現場や警察、消防などチームでひとつの目的を達成するために行動する現場に一番適している」(鈴木直也部長) さらに、宇宙飛行士候補への訓練の経験を、今後民間人の宇宙旅行が増える時代に向けた事業チャンスと捉えます。 「宇宙の輸送が始まった際には、携わる人の訓練に活用できるのではないか」(鈴木直也部長) ※ワールドビジネスサテライト