水原被告が異例の「スピード有罪合意」 背景と量刑の見通しは? 米専門家に聞く
現地5月8日、アメリカ連邦検察は大谷翔平選手の元通訳、水原一平被告(39)を銀行詐欺と虚偽の納税申告の罪で起訴した。水原被告は、有罪答弁による司法取引に異例のスピードで合意し、今後、正式な裁判は行われない。 【画像】ローリー・レヴェンソン教授「悪質性は高いと言わざるを得ない」 背景には何があったのか、司法取引による減刑はどの程度なのか。連邦検察の元刑事部次長で、連邦刑法ハンドブックの著者でもある、ロヨラ・メリーマウント大学のローリー・レヴェンソン教授に話を聞いた。 (テレビ朝日ロサンゼルス支局長 力石大輔)
■「光速を超える速さ」双方が早期解決を図りたい理由
記者:発覚は3月、訴追は4月、起訴は5月。急展開をどう見ますか。 例えるならば、SFドラマ『スタートレック』のワープドライブ級の、光速を超える速さです。きっと水原被告に、早期解決を図りたい理由があったのでしょう。各関係者の責任の所在を、明確にしたかったのだと思います。連邦検察側にも、同じ意図があったと思います。大谷選手が完全な被害者であり、責任が全くないことを明確にしたかったので、手続きを早急に進めたのでしょう。今回の事件では、銀行詐欺罪だけでなく多くの関連する罪で訴追することが出来ましたが、実際、連邦検察は銀行詐欺のみで訴追していました。 記者:一方でなぜ起訴の段階で、虚偽の納税申告の罪が加えられたのでしょうか。 今回の事件捜査には、連邦検察だけでなくIRS(内国歳入庁)が加わりました。アメリカにおいて、脱税は重罪です。金額によっては、刑務所に入らなければなりません。それは納税が、共に社会を形成するための、民主主義の根幹だからです。連邦検察はなるべく早く、有罪答弁による司法取引で決着させるべく、焦点を銀行詐欺罪だけに絞ったと思いますが、IRSは虚偽の納税申告を起訴内容に入れるよう、強く要望したのではないでしょうか。巨額のお金を不正に得て、その分まで収入として適切に納税する人は、いませんよね。全米がこの事件に注目する中、「脱税は許されないのだ」というIRSの強いメッセージ性を感じます。