中国経済は「日本化」回避できるか:不動産不況には政府の直接介入が必要
「伸びしろ」残る中国経済
では、中国が経済の苦境から脱することは不可能なのか。日本では、1990年代の不動産バブル崩壊に伴い、潜在成長率が4~5%から1%程度まで低下して、そのまま元には戻らなくなった。中国は、日本と同じような道を歩むのだろうか。 中国経済は人口減少などの構造要因から今後も減速するのは避けられないものの、筆者は、政府が適切な政策対応を打ち出せば、日本の1990年代以降のような低成長にいきなり陥るのは回避できると考えている。 中国の都市人口比率は2023年末時点で66%だが、これは日本の1963年と同じ水準だ。また、2022年の1人当たり名目GDP(米ドル換算)は米国の6分の1で、これは日本でいえば1960年と同水準。つまり「伸びしろ」がかなりある。総人口の減少が始まったことや少子高齢化といった変化を踏まえても、中国経済の発展段階は日本の1990年代よりは「若い」と考えられるのだ。
デフレの恐れ
いったい中国経済はどのような政策対応によって軟着陸が可能なのだろうか。筆者は3つの策を同時に実施する必要があると考えている。それは、(1)マクロ経済政策の十分な拡張(2)不動産不況に対する抜本的対応(3)民営企業の活動範囲を拡げる経済改革-である。 まず、財政・金融政策というマクロ経済政策を考えてみたい。中国では、デフレが懸念されている。1月の消費者物価指数は前年比0.8%低下、生産者物価指数も同2.5%下落した。物価の下落傾向には、食品・エネルギー価格の下落といった供給要因も関係しているが、最も重要なのは最終需要の弱さである。個人消費や企業の投資マインドが弱く、最終需要の弱さにつながっている。こうした状況では、政府が財政・金融政策を拡張させて、最終需要を喚起する必要がある。 中国政府も、昨年12月の中央経済工作会議で需要不足を認め、「反循環的な」調節を強化するとした。今後、財政・金融政策は拡張していくであろう。ただし、これまでの経済政策は、景気浮揚には不十分な可能性がある。今後、一段の思い切ったマクロ経済政策が必要となろう。