「光る君へ」紫式部が道長の子を産むオリジナル展開、なぜ?制作統括・内田ゆき、予想上回る反響を振り返る
脚本づくりにおいて大石と最も頭を悩ませ議論を重ねたのも、まひろが道長の子を産む展開だったという。
「議論を重ねたところはたくさんあるんですけど、やはりそこが大きかった気がします。まひろの人生の緩急、そして道長の人間性をどう動かすかというのは、悩みながら進めていきました。というのも、歴史上で伝わる道長像、権力の頂に立った男性って、ある意味であまりリアリティがないんですよね。わたしたちは道長の少年時代から描いているので、その彼が権力の頂点に立つとは何なのか、息子に継承するというのはどういうことなのかといったところをうまく、なおかつまひろも絡めながら描いていくというのは難しいところではあったなと思います」
昨年12月に行われた本作の第一回の試写会で、内田が「1976年放送の(平将門を主人公にした)『風と雲と虹と』に次いで2番目に古い時代。なおかつ、貴族社会が中心で合戦がほとんどない物語は大河としては初めてになります。また、大河ドラマは男性の主人公が多いのですが、女性主役としては『おんな城主 直虎』以来7年ぶりです。ほぼ史料の残されていない主人公を描くという意味でも、非常にチャレンジングな題材」と話していた。放送開始後、まひろと道長のラブストーリー展開は予想を超える反響だったというが、内田はこの反響をどのように見ているのか。
「もともと“大きな合戦はないけど観てしまう”というのは狙っていたところではありますが、こういう風に見ていただけるといいなと思っていた通りになったといいますか、想像を超える反響があったように思います。我々が考えていた以上に大石さんが『源氏物語』のように多種多様なキャラクターを書き分けてくださったので、視聴者の方それぞれに“推し”というか、お気に入りの登場人物もいらっしゃるようですし、登場している期間が短かったとしても心を寄せていたら次も観てしまうと、 うまく繋いでいけているのかなと思います。あとは、平安はこれまでの大河ドラマでほとんど描いていない時代なので、そういったところも好意的に受け取っていただけたのかなと。宮中の女房たちの生活ですとか、美術チームが細部にわたって心を砕き、誰が何を言うでもなく積極的に勉強しているんですよね。登場人物の心情に視聴者がスムーズに入っていくためには、主人公が本当に平安の世を生きているように見えることがすごく大事なので、そうした陰の努力が結実した結果なのではないかと思っています」
第45回で、まひろに代わって娘の彰子に仕えることとなった娘の賢子を遠くから見て、苦悶の表情を見せた道長。まひろに別れを告げられ間もなく出家してしまったが、二人の愛はどのような終着点を迎えるのか……。(編集部・石井百合子)