【ラグビー】古巣・サンゴリアスとの決戦へ向かう気持ちは早明戦のよう。中村駿太と祝原涼介(イーグルス)の進化と決意
胸の内を分かりやすく例えた。 「試合への気持ちの持って行き方とか、この1週間、早明戦のような感じです」 3月23日(土)、中村駿太は横浜キヤノンイーグルスの2番のジャージーを着て、秩父宮ラグビー場で東京サントリーサンゴリアスと戦う。 昨季まで7シーズン在籍した古巣の仲間たちと対峙する。 「楽しみです」と素直に言う。 トイメンはチームメートで後輩だった堀越康介。「日本代表だし強い相手です。リスペクトし、僕には僕の良さがあるので、その強みを出して戦います」と話した。 長く在籍したチームのことは、よく理解している。 だからイーグルスの仲間へ、サンゴリアスのマインドセットなどを伝えることがある。勝ち慣れたチームを上回ることは簡単ではないと知っている。 良すぎる居心地が、自分の進化のスピードアップを妨げている。そう判断し、プレーオフも含めた全18試合出場したシーズンを終えた後にイーグルスへ移籍した。 新天地に来て数か月。環境を変えて良かったと体感している。
今季は開幕からの全10試合すべてに出場し、先発で6試合。2月末には30歳になったが元気だ。 ただ本人は、「すべての面で、もっとやらないといけない」と厳しい自己採点をする。 自分に求められているものはもっと上のレベルだと分かっているからだ。 「スクラムをもっとうまくやらないといけない。ボールキャリーやスキルの部分は強みです。そこをもっと上げて、庭井さん(祐輔)/HO/32歳)ともっと差別化しないと」 周囲の要求の高さを感じて発奮する。新たな好敵手との競争。自分が求めていたものがそこにある。それだけでも移籍は成功だったと思う。 「スクラムの組み方も、サンゴリアスとイーグルスでは違います。その両方を知れたことは、僕の財産になる」と笑顔が漏れる。 チームカルチャーの違いも自分に新たな価値観を与えてくれている。 自身の歩んできた道を振り返ると、桐蔭学園、明大と、同じポジションの選手たちとはあまり言葉を交わしてこなかった。 サンゴリアスも、ライバル心を出して争うチームだった。 しかしイーグルスは、「みんなで良くなっていこうという空気が強い」と感じている。 試合の2日前、例えば土曜日が試合なら、木曜日の練習後は10数人でグラウンド近くのコーヒーハウスに向かい、プライベートのこと、ラグビーのことをあれこれ話し、リラックスした時間を過ごす。 「庭井さんも、いろんなアドバイスをくれます」 馴れ合いとは違う、そんな団結力が新鮮だ。チームのあり方は、一つではないのだ。 この仲間たちと勝ちたい気持ちが、どんどん強くなっている。 サンゴリアスに所属していた昨季、3回戦ったイーグルス戦のすべてに出場している。 2勝1敗と勝ち越してはいるけれど、シーズンラストゲームとなった3位決定戦では敗れた。 その借りを返したい気持ちは試合が近づくにつれて強くなっている。 その研ぎ澄まされていく気持ちが、大学時代に戦った早明戦に向かう1週間のものと似ているのだ。 絶対に負けられない、負けたくない一戦へ、闘志がみなぎる。 この試合への熱は、周囲の仲間たちの思いとは違ったものがあって当然だろう。 「言葉でははっきりとは伝えられていませんが、(特別な思いから生まれる)そういうものを期待されているとは感じています」 両チームの応援席に、自分を応援してくれる人たちがきっといる。 新しい環境で自分が成長した姿を見せる。