【訂正】ガンダム新作『ジークアクス』に集うスタッフを解説 鶴巻和哉×榎戸洋司コンビへの期待
鶴巻和哉監督に、本格的にスポットライトが当たる日が来た。『機動戦士 Gundam GQuuuuuuX』(以下『ジークアクス』)のことだ。 【写真】GQuuuuuuXのメカデザイン 鶴巻監督はその実力とは裏腹に、過小評価されてきたと思う。旧GAINAX、スタジオカラーという才能揃いのスタジオにおいて常に主力メンバーであり続けたが、庵野秀明氏という巨星の陰に隠れがちだったかもしれない。しかし、「ガンダム」という巨大IPに新風を吹き込み、同シリーズの良さも同時に引き出し得る監督だと筆者は思う。 ●鶴巻和哉×榎戸洋司コンビにかける期待 鶴巻監督は、世間的な知名度は決して高くないかもしれないが、一部評論家や熱烈な国内外のアニメファンには、その実力は知られていた。知名度がいまいち低い理由は、監督としての代表作がOVA作品や、特別放送のような形式での発表だったせいだろう。鶴巻監督は、1980年代からアニメ業界で活躍しているが、監督作品は2000年の『フリクリ』、2004年の『トップをねらえ2!』、2017年の『龍の歯医者』くらいだ(特典映像の『新トップをねらえ! 科学講座』など短い作品では他にもあるが)。 そのうちの2本『フリクリ』と『トップをねらえ2!』はOVA、『龍の歯医者』はNHKでの単発放送だった(現在は配信サイトでも視聴可能)。劇場アニメやテレビシリーズとして展開した作品は手掛けていない。 だが、この3本はいずれもクオリティが高い。特に『フリクリ』は、アバンギャルドとポップさを併せ持った怪作で、OVA作品としては高いセールスを記録、海外でも人気が高い。物語の理解は難しいが、ショットの美しさとレイアウトの見事さ、縦横無尽に変化するアニメーション、マンガの紙面を写した斬新な演出など、遊び心ある絵作りが満載。一方で、主人公の少年、ナオ太の不安定な心情と寂寥感が巧みに表現された芝居と脚本、ハル子などの魅力的な女性キャラクターなど見どころの多い作品だ。ハチャメチャをやっているようでいて、詩情豊かな作品でもあり、物語が理解しづらくても画面に引き込む力が非常に強い。海外において、「日本アニメはクールだ」というイメージを形成した作品の一つといっていいだろう。 『トップをねらえ2!』は、前作とはテイストが異なる作風で、現代的にリブートに成功。近年の『龍の歯医者』は、7分の短編として発表された後、前後編45分ずつの長編作品として改めて制作された。空飛ぶ龍を守護する歯医者の一族の少女と、彼らが属する国と戦争している国の少年との交流を軸に、命の尊さを描く作品で、争いのある世界の理不尽に翻弄される少年少女の切ない物語で感動を誘う。 これらの鶴巻監督作品で脚本を務めたのは、『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)や『少女革命ウテナ』(以下、『ウテナ』)で知られる榎戸洋司だ。『エヴァ』も『ウテナ』も思春期のキャラクターの葛藤を切実に描写し、当時の若い世代の心を捉える要因となったが、その筆力は『フリクリ』でも発揮されている。『ジークアクス』の主人公アマテ・ユズリハは女子高生の設定だが、榎戸が新たにどんな物語を紡ぎ出すのか、期待したい。ちなみに、『ガンダム』シリーズの前作『機動戦士ガンダム 水星の魔女』は、『ウテナ』の影響を指摘する声が多く聞かれたが、そんな作品に次いで『ジークアクス』は女性パイロットと主人公となる。『水星の魔女』のような決闘の要素もあるようだし、『ウテナ』を書いた榎戸が「ガンダム」と女性の物語をいかに描くのか、注目したい。 個人的には、特報からすでに鶴巻&榎戸コンビの特徴が香り立っていると感じる。特に、59秒あたりにあるアマテ・ユズリハが走っているところを横から捉えたショットの抒情性が良い。