「香水」ばかりで嫌になることもあった――瑛人が乗り越えた「香水の呪縛」
森山直太朗に言われた“一か八か”のススメ
昨年発売された1stアルバム『すっからかん』に、今まで作った曲を全て込め、文字通りの“すっからかん”になった姿勢は、最新作『1 OR 8』にも込められた。“一か八か”という強い覚悟を感じさせるタイトルは、敬愛するミュージシャンにして事務所の先輩である森山直太朗によってもたらされた。 「直太朗さんとは何かと二人でカフェに行って、そのたびにアドバイスをもらっているんです。ある日、いつものようにカフェで話していたら『瑛人はさ、“一か八か”の精神がいいんじゃない?』って言われました」
“一か八か”の語源を調べ、丁半博打の丁の「一」、半の「八」が由来と知った瑛人は「博打……俺の人生みたい。カッコいいな!」と惹かれるものを感じた。 「『香水』でポッと出たラッキーボーイ!って言われている俺の生き方的にピッタリな言葉。『良いなら良い! 駄目なら駄目でいいじゃん!』って。けど、焦りとか追い込まれた意味での“一か八か”ではなくて。『今、すごい人がたくさんいるから、俺も本気でやらなきゃその輪の中に入れないぞ! じゃあ、やるか!!』というチャレンジ精神に近い。やっぱずっといい状態でいたいですからね」
これまでにないほどに大胆で自信に満ちあふれた想いが前面に出た歌詞は、横浜の音楽好きな青年が、いよいよ一人のミュージシャンとして本格的に立つという宣言に聞こえる。そう告げると、瑛人は何度目かの音が聞こえてくるような笑顔を見せた。 「一昨年の『紅白歌合戦』が終わった後、『情熱大陸』のインタビューで『今どんな気持ちですか?』って聞かれて、『今、やっと靴紐を結んだぐらいですね』って答えたんです。その靴紐を結んだ後の第一歩が『1 OR 8』。ようやくですよ、この一歩を踏みしめるのに1年かかりました。けど『すっからかん』から、ちゃんと成長できた自分がいる。この一枚は俺にとって大事な一歩かな。その歩幅がほかの人と比べて大きいのか小さいのかはわからないけれど、俺には大きい一歩ですね」