神経戦つづく株式相場 「王者」トヨタ株がじわり存在感
米国発の株安ショックで2月初旬に激しく揺さぶられた日本株。実際、NYダウは現地2日5日に1175ドル安、8日には1032ドル安を記録し、それに直撃された日経平均は6日と9日にそれぞれ1071円安、9日には508円安となり、マーケットに警戒感が一気に広がった。その後、円高の進行もあって、株価は神経質な展開が続いているが、どうやら最悪期は通過した、との見方が台頭している。こうした状況下、全体相場を立て直すフロントランナーとして注目度を次第に高まっているのはトヨタ自動車(7203)だ。なぜ、今、トヨタなのか――。(解説は証券ジャーナリスト・駿河一平)
上場企業で時価総額23兆7900億円(2月20日現在)とトップに立つトヨタ自動車。そうした「王者」の動きが、波乱相場で揺れる東京株式市場でスポットライトを浴びている理由は主に二つある。 いうまでもないことだが、一つは好業績。とりわけ傑出した収益を計上する、恒常的な「稼ぐ力」に熱い視線が注がれている。 もう一つは、比較優位をキープしている株価の推移だ。この点が顕著に現れているのは日経平均やTOPIX(東証株価指数)など主要指数と比べた頑強な足取りである。
業績見通し、超過達成も
まず、業績から見てみよう。2月6日に発表した今3月期第3・四半期累計(昨年4~12月=3Q累計)連結決算は売上高21兆7969億7400万円(前年同期比8.1%増)、営業利益1兆7701億8600万円(同13.8%増)、当期利益2兆131億7700万円(同40.5%増)となった。当期利益が大幅に伸びたのは米国の税制改正に伴い、繰延税金負債が取り崩されたことによる利益寄与の結果だ。 こうした3Q累計連結決算を受けて、同社では通期の業績見通しを増額修正。売上高はそれまでの28兆5000億円を29兆円(前期比5.1%増)、営業利益は2兆円から2兆2000億円(同10.3%増)にそれぞれ引き上げた。米税制改革効果によって当期利益も1兆9500億円から2兆4000億円(同31.1%増)に大きく上方修正。 ただ、トヨタの場合、為替に対する業績感応度が高く、ドルに対して1円、為替相場が変動するだけで、年間の連結営業利益は約400億円動く。今年1月以降、つまり第4・四半期(1~3月)の為替の前提レートとして1ドル=110円、1ユーロ=130円を想定しているだけに、足元の為替動向がどう影響するかが注目されるところだか、2月16日にドル・円相場が1ドル=105円台に突入する円高局面にあっても株価はさほど下振れすることなく推移。円高リスクの株価への織り込みはかなり進んだといえるだろう。 実は、今回の上方修正は今年度に入ってこれで3度目。たえずガードを固めた経営は保守的な見通しとなってあらわれている。強力なコスト削減と拡販策の同時追求によって、5月初旬に発表する通期の決算も計画値を超過達成する可能性がある。