神経戦つづく株式相場 「王者」トヨタ株がじわり存在感
顕著な株価の割安感
もう一つの注目点である株価動向については2月初旬~中旬の全体相場の波乱局面で、トヨタの“粘り腰”がいかんなく発揮された。ちなみに、昨年来高値である今年1月18日の7806円から2月14日に付けた7080円までの下落率は9.3%で、日経平均の取引時間中価格でとらえた1月高値から2月安値までの下落率13.1%を下回っている。 2月中旬にかけての株価下落局面では国内機関投資家の下値拾いの動きが活発化したほか、「個人投資家の買いも相当に膨らんだ」(銀行系証券)という。オーソドックスな投資尺度である予想PER(株価収益率)は会社側予想ベースで2月21日現在、8.99倍と、日経平均採用銘柄平均の13.03倍、東証1部上場銘柄平均の15.10倍をいずれも下回り、「超割安」の水準にある。
証券各社も高評価
それでは株式マーケットのトヨタに対する具体的な株価の評価はどうだろうか。トヨタの株価は2月21日時点の終値は7300円。3Q累計決算を発表した2月6日以降、外資系証券や国内有力証券会社の投資判断をみると、いずれも時価を上回る目標値を掲げている。最も高い目標値を打ち出しているのは三菱UFJモルガンスタンレー証券の1万円。2月7日にそれまでの7000円から、一気に3000円アップした。マッコーリー証券の8400円。岩井コスモ証券の8200円、メリルリンチ証券の7600円、ゴールドマン・サックス証券の7500円、大和証券の7400円がそれに続く。国内最大手の野村証券の場合、昨年11月に7700円から9000円に引き上げて以来、目標値とともに投資判断の「Buy(買い)」を変えていない。 証券会社だから、威勢のよい上値目標を打ち出すのは当たり前と思われるかもしれないが、業績不振や見通しがパッとしない上場企業には証券アナリストの評価は厳しくなるのは通例で、横並びで一斉に強気の判断を下す時代は、完全に過去のものとなっている。証券各社のトヨタに対するポジティブな投資判断は好実態を素直に評価した結果といえる。 東京株式市場は2月初旬以降の波乱状態をくぐり抜けたあと、今度は景気・企業収益を再点検する格好で、これまで以上に業績敏感型の相場にシフトすることが考えられる。そのリード役として、トヨタは順調にいけば3月中にも1月高値にトライしそうだ。 (証券ジャーナリスト・駿河一平)