サッカー日本代表に一体感 佐藤寿人が実感した「長友佑都の存在の大きさ」
2026年ワールドカップ・アジア最終予選の第4節・オーストラリア戦で引き分けて公式戦の連勝が7でストップした日本代表。迎える11月シリーズの2試合は、ともにアウェーでの戦いとなる。 【図】サッカー日本代表 識者が考察したアジア最終予選のベスト布陣 11月15日に行なわれた第5節のインドネシア戦。この試合で最終予選は折り返しを迎えた。高温多湿の気候で、なおかつ雨も降るピッチコンディションの悪いなか、日本は4ゴールを奪い、なおかつ無失点でインドネシアを一蹴。結果だけを切り取ると楽勝のように見える。現地で取材を重ねる元日本代表FW佐藤寿人氏の目には、日本代表のアウェーの戦いはどう映ったのか。 ※ ※ ※ ※ ※ 最初はちょっとバタついた感がありましたね。おそらく相手が前線の配置を変えてきたことが影響したと思います。そこにアジャストするのに、少し時間を要してしまった印象です。 僕は今回もDAZNのピッチ解説という立場で現地に行かせていただきました。本来はピッチから情報をお伝えしたかったのですが、スコールの影響でそれが叶わず、スタンドから試合を見ることになりました。 ピッチの上から俯瞰して見たことで、日本の組織は明らかに間延びしているのがわかりました。相手が高い位置を取ってきたことで、両ウイングバックも含めて最終ラインは下がってしまい、逆に攻撃陣には前から行きたいという雰囲気があったので、全体のコンパクトさを欠いてしまいました。 そうした展開となったのは、スタジアムの雰囲気も影響していたように思います。 無料ということもあり満員の観衆が詰めかけたなかで、本当に何でもないようなプレーでも大歓声が沸き起こりました。まるでアイドルのコンサートのような雰囲気に日本の選手たちは戸惑ったところもあったと思います。ですが、それ以上にインドネシアの選手たちのテンションがかなり上がっているように感じました。
【熱狂ぶりに久保建英も「うらやましい」】 彼らはリスクを取るというよりも、自信を持ってプレーしていましたね。インドネシアのこれまでの試合を見ると、うしろの人数を多くして、少ない人数で攻めていく形でしたけど、前半の立ち上がりは特に両ウイングバックが高い位置を取り、前線に5枚が並ぶ形を取っていました。 そうすると縦パスの入るコースが多くなりますし、実際にそれがうまくつながるシーンもあった。そこで大声援が送られることで、それほどチャンスではなくても、大きなチャンスのように思えてしまう。スタンドの雰囲気がインドネシアの選手たちに幻想を抱かせ、それが積極性へとつながっていたんだと思います。 スタジアムだけではなく、インドネシアのサッカー熱の高さというものは至るところで感じられました。日本でもそういった報道があったと思いますが、実際に現地に来てみると、想像以上の熱狂ぶりでした。自国の代表だけではなく、日本代表に対する関心度も高く、練習にも多くのメディアが訪れていました。 ここまで国を挙げてサッカーを盛り上げてくれているのは、久保建英も「うらやましい」と言っていましたけど、僕自身も率直に同じことを感じました。 試合の前日にはインドネシアサッカー協会の主催で、両国のメディア関係者同士の試合が行なわれました。キックオフは22時で、試合終了が24時。こんなところにもサッカーを愛する彼らの情熱が感じられました。ちなみに僕は途中から出場して、1得点2アシストを記録。"前哨戦"で5-1の勝利に貢献しました(笑)。 話を戻すと、間延びした日本に対して、インドネシアのカウンターが脅威を与えていました。最初のピンチを鈴木彩艶が防いでくれましたけど、あそこで決められていたら、試合は難しくなったと思います。 とはいえ、先手を取られても十分に巻き返せるとも思っていました。ゴール前のクオリティだったり、一つひとつのプレーの質というものは、やはり大きな差があると感じられたからです。実際に日本は徐々にリズムを取り戻し、前半のうちに2点を奪うことができました。