中国自動車市場「底なし価格競争」の苛酷な実態 GM、日産、VWなど外資系の新型車も大幅値下げ
中国自動車市場の価格競争が「底なし」の様相を呈している。 アメリカのゼネラル・モーターズ(GM)と中国の上海汽車集団(上汽集団)の合弁会社である上汽GMは9月14日、キャデラック・ブランドの新型SUV「XT5」の販売予約の受け付けを開始した。同社は期間限定のプロモーションとして、XT5の予約価格を27万9900元(約555万円)からに設定。旧モデルの同等グレードより12万元(約238万円)も引き下げた。 【写真】セレスがファーウェイと共同で立ち上げた「問界」ブランドの高級SUV
前日の9月13日には、日本の日産自動車と中国の東風汽車集団の合弁会社である東風日産(正式社名は東風汽車有限公司)が上級セダン「ティアナ」の追加グレードを発売。その価格は9月末までの期間限定で、わずか12万7800元(約254万円)という安さだ。 ■BYDがプライスリーダー ドイツのフォルクスワーゲン(VW)と上汽集団の合弁会社である上汽VWも、9月10日に発売した上級セダン「パサート・プロ」の価格を15万9900元(約317万円)からに設定。かつては上級セダンを代表する人気モデルだったティアナとパサートだが、今の価格は大衆車並みだ。
上述の外資系3社が新型車の価格を大幅に引き下げた背景には、個人消費の減速にともなう自動車販売の不振がある。そのうえ、価格帯が20万元(約397万円)以下のカテゴリーでは、EV(電気自動車)とPHV(プラグインハイブリッド車)の値段をエンジン車並みに引き下げた比亜迪(BYD)がプライスリーダーとなり、市場を席巻している。 競合メーカーがそれに対抗するには、赤字覚悟で値下げせざるを得ないのが実情だ。これから市場に投入される新型車も、クルマ自体の魅力を高めるとともに価格を大幅に下げなければ、ヒットは望めそうにない。
中国の自動車市場は全体的に冷え込んでいるが、メーカー別やカテゴリー別に見ると温度差が大きい。 状況が最も厳しいのは、かつての主流だったエンジン車だ。自動車販売の業界団体、全国乗用車市場信息聯席会の崔東樹秘書長は9月10日付のレポートの中で、2024年1月から8月までに中国市場で販売されたエンジン車は累計744万台と、前年同期比15%減少したとのデータを示した。 一方、EVとPHVに代表される「新エネルギー車」は、中国市場の新車販売台数に占める比率が7月と8月の2カ月連続で50%を超えた。言い換えれば、新エネルギー車が主力のメーカーは(現在の厳しい市場環境でも)販売を伸ばす余地があるが、エンジン車が主力のメーカーは軒並み市場シェアを落としている状況だ。