「心不全」の初期症状はご存じですか? 日常生活でできる予防法も医師が解説!
心不全に対する治療法
編集部: 心不全を放置するとどうなるのですか? 伊藤先生: 心臓の機能はどんどん低下していき、最終的には命の危機に至ります。現在、日本における死因別死亡総数の順位を見ると、1位は悪性新生物(がん)で、2位は心疾患です。この心疾患には心不全も含まれており、心不全による5年生存率は50%であることが研究により判明しています。 編集部: 心不全の治療は、どのようにおこなわれるのですか? 伊藤先生: 心不全は生涯を通して、ずっと付き合う必要があります。急性期から慢性期と、病態には幅があり、急性期と慢性期では時期によって治療法が異なります。特に日常生活において重要なのは、慢性期に対する治療です。基本的に薬物療法をおこないながら、症状の軽減と予後の改善を目指します。 編集部: 日常生活で注意すべきことはありますか? 伊藤先生: まずは自分の心臓の状態をよく理解し、心臓に負担をかけない生活を心がけることが大切です。医師の指示通り服薬をおこなうとともに、「体重が増えないようにする」「塩分や水分を摂りすぎないようにする」などに気をつけましょう。 編集部: 肥満や水分・塩分の摂りすぎは、心臓に悪いのですね。 伊藤先生: はい。体重が増えればその分、心臓はたくさんの血液を全身に循環させる必要があるので、心臓に対する負荷は大きくなります。また、食塩を多く摂取すると体内の水分量も多くなり、結果的に体内を循環する血液量も増えて心臓に負担がかかります。
心不全の日常生活における注意点
編集部: ほかに注意すべきことはありますか? 伊藤先生: お酒の飲み過ぎにも注意しましょう。お酒を飲み過ぎると味覚が鈍るので、どうしても味が濃いものを食べてしまいがちです。すると塩分の摂取量が多くなり、体内の水分バランスが崩れてしまいます。その結果、血圧が上昇し、心臓への負担が増してしまいます。また、喫煙も血圧を上げたり、不整脈の原因になったりして、心不全を悪化させます。 編集部: 運動はした方がいいのですか? 伊藤先生: 症状が安定していれば、適度な運動は体の機能を改善する効果が期待できますし、肥満予防やストレス解消にも有効です。心臓リハビリのプログラムを提供している医療機関もあるので、そうしたサービスを活用してもいいと思います。ただし、過度な運動は症状を悪化させるので気をつけましょう。 編集部: そのほかに、気をつけた方がいいことはありますか? 伊藤先生: 心不全を発症している人の中には、高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、貧血、睡眠時無呼吸症候群などを併発しているケースも少なくありません。これらは心機能を低下させる原因にもなりますし、反対に、心不全がそれらの疾患を増悪させる原因にもなります。こうした併存疾患がある場合は、しっかり治療をおこなうようにしましょう。加えて、風邪や感染症にかかると心臓に負担がかかり、心不全の悪化につながるので、感染症予防も心がけてほしいです。 編集部: 最後に、読者へのメッセージをお願いします。 伊藤先生: 「心不全は怖い」と考えている人も多いと思います。しかし、上手に付き合うことによって健康的な生活をしている人もたくさんいます。心不全と上手に付き合っていくことが治療のカギになります。そのため、患者さんが主体となって心不全と向き合い、医師と一緒に頑張っていきしょう。あとは、毎日体重を量ることも大切です。心不全が悪化するとむくみなどにより、短期間で体重の増加がみられます。むくみや息切れなどは時間が経つにつれて慣れてしまい、あまり気にしなくなってしまいますが、体重は数値で示される変化として信頼できます。目安として、1週間で2kg以上体重が増えた場合には、早めに医師に相談しましょう。