『魔法少女まどか☆マギカ』が今も注目され続ける理由 新劇場版からTV版再配信まで
『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』は我々をどう裏切るのか
だから続編が作られた。それは、TVシリーズ以上にほむらの物語だった。テレビシリーズの総集編を前後編で描いた後、『劇場版まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』というタイトルで公開された新作では、TVシリーズが改めて始まったかのように見えるアバンを経て、Clarisの「カラフル」をバックにオープニングに当たる映像が流れる。初見でもどこか違和感を覚える映像を鑑賞後に見返すと、ほむらの孤独さと絶望ぶりが色濃く出ていることに気付く。音楽がタイトルどおりにカラフルなだけに、映像とのギャップが胸を苦しくさせる。 『[新編] 叛逆の物語』の結末は、観ようによってはTVシリーズよりも半歩下がって幸せさを取り戻したようにも取れなくもない。ただ、依然として残った孤独さがやはり引っかかった。これが取り除かれて初めて、喜びのうちに幕を閉じることができるのだと、誰もが思い続編を願って10余年。ついに発表になった『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ〈ワルプルギスの廻天〉』の製作に、ファンが歓喜したのも当然だ。 もっとも、公開されている予告映像はどうにもダークさが強く、とりわけほむらの悪魔的な雰囲気は、『[新編] 叛逆の物語』から増しているようにも見える。これで本当に皆が救われるのか。そんなに都合の良いことを、脚本の虚淵玄(ニトロプラス)がするはずがないのだと誰もが感じているだけに、より恐ろしいものを見せられる可能性も高い。 ただ、裏切りに裏切りを重ねてきたのが『まどか☆マギカ』であるなら、明るい方向への裏切りがあっても良いかもしれない。そこは虚淵玄と観客との勝負だ。裏の裏の裏を読み合った果てに、誰もが思い浮かばなかった結末が待っているならそれは令和という時代に、改めて、『まどか☆マギカ』という作品の価値を刻むことになるだろう。今は公開を待つしかない。それまで放送と同様に1週間ごととなるYouTubeでの配信を観ながら、2011年の1月から4月にかけて毎週起こった喜びと驚きと憤りと哀しみの叫びを聞こう。 放送途中に見舞われた3.11という絶望的な現実の事態への叫びを、今回は誰も上げないで済むことを願いながら。
タニグチリウイチ