インド映画が踊りまくるのはなぜ?年間製作約2000本、世界一の映画大国に見る特殊な事情
近年、『RRR』や『バーフバリ』などインド映画が盛り上がっている。ド派手なアクションや陽気に歌い踊るシーンに夢中になる人が増えているのだ。インド映画の特徴ともいえるダンスシーンの理由やインド映画界の裏事情をインド沼にハマった筆者が解説する。※本稿は、宮崎智絵『インド沼 映画でわかる超大国のリアル』(インターナショナル新書、集英社インターナショナル)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 制作数はアメリカの約3倍 インド映画が増えた理由 世界で一番映画を制作しているのはインドです。年間制作数を見るとアメリカは2017年で660本ですが、インドは2016年には1986本です(「世界の統計2023」総務省統計局)。なぜこのようにたくさんの映画を制作しているのでしょうか。 1つは、映画のチケット代が安く、庶民の娯楽だからです。1990年代あたりは単館上映の映画館があちこちにあり、お茶やジュースを飲むぐらいの値段で映画を観ることができました。 ただし、近年はインドの経済成長もあり、どんどんシネコン(大型映画館)に変わっています。シネコンは、従来の映画館よりも高く、ちょっとしたディナーぐらいの値段です。平均チケット価格は0.81米ドル。日本の平均チケット価格は12.77米ドルなので、いかにインドの映画チケット価格が安いかがわかります。 他の理由としては、インドが多言語国家である点が挙げられます。ヒンディー語、タミル語、テルグ語、カンナダ語、ベンガル語など、それぞれの地域ごとに映画を制作するため、映画の本数が増えるのです。 日本で上映される映画も『ムトゥ踊るマハラジャ』はタミル語、『RRR』はテルグ語、『きっと、うまくいく』はヒンディー語、というように同じインド映画といっても、もともとの言語は違うのです。 ところで、インド映画では踊るシーンがいくつか入っていることが多いです。