バレーボール元日本代表・荒木絵里香が考える体罰問題 両親・恩師の言葉で気づいたスポーツの本質
■「一番大事な価値は?」 恩師の言葉で導かれたバレー人生
「選手の自主性を大事にする」という小川監督の指導方針のもと、下北沢成徳でバレーボールに打ち込んだ荒木さんは、在籍中にインターハイ・国体・春高バレー優勝の3冠を達成。卒業後はVリーグでプレーを続け、日本代表としても第一線で活躍しました。 高校卒業後、さまざまな壁にぶつかってきたという荒木さん。小川監督に悩みを相談しにいった時にかけられた言葉が、今も印象に残っているといいます。 ◇◇◇◇ 荒木:上にあがればまた違う問題とか悩みとか挫折があって、小川先生に悩みを相談したことがあったんです。その時に先生に言われた言葉が「絵里香にとってバレーボールの一番大事な価値は何?」。価値って何だろう…って考えた時に、全日本だとか優勝するという“結果”ではなく、“バレーボールが上手くなりたい”ということに一番大事なものがあると改めて気づいた。また軸が自分の中でしっかりしました。そこは定期的に気づかせてもらっている、先生の導きだと感じました。
■体罰をなくすために…大人がすべきこととは
両親から“スポーツとは何か”を教えてもらい、恩師から“スポーツの一番の価値”に気づかされ、学びを得てきた荒木さん。身近な大人たちに支えられていた荒木さんだからこそ思う、体罰をなくすために大人がすべきことを明かしてくれました。 ◇◇◇◇ 佐藤:実際に体罰などがあるチームがあった時に、どうやったら生徒たちが自分たちで考えてスポーツを楽しめるようになると思いますか。 荒木:小川先生がおっしゃっていたのは「暴力をふるうことや体罰は、指導者が、指導力がないからそれに頼るしかないんだよね」とおっしゃっていて。やっぱり指導者側、大人の問題。大人の知識不足、勉強不足、指導力のなさが問題なのではないかと思います。子供は何もない状態だから、子供、選手は問いかけや導きでどこへでも行ける状態だと思う。指導者側の意識、それを見ている周りの保護者も含めて、社会全体の大きな問題になっていきますよね。 佐藤:子供は真っ白なんですね。 荒木:自分もそうだったように、その中に入ると“先生は絶対”だと思ったし、仲間もやられているから自分もやられて当たり前だと私も思ったんですね。でもそれは違うと最初に両親が教えてくれたことは大きかった。子供はまっさらだから、そこにいい方向に導いてあげられるようなアシスト、サポートというのが周りの大人ができることだと思う。「勝つ」、それは一番大事なことではないと思うので、バレーボールを通して良い経験、良い成長のきっかけになるような、そういうものが子供にとってのスポーツ、バレーボールであってほしいなと。そのためのサポートを大人側がいろんな知識を得ながらしっかり勉強するということを大事にしながら支えてあげられたらいいなと思います。 【取材後記】 荒木さんが4大会連続で五輪に出場した原動力は、バレーボールが上手くなりたいという思い、そして、「スポーツを通じて人生を豊かにする」という言葉にあるように感じました。部活動の体罰問題でお話を伺いましたが、スポーツに限らず、大人になって自分自身を見つめ直すきっかけとなるメッセージをもらいました。荒木さんはご両親の支えや恩師との出会いに恵まれていたと話されましたが、これからの子供たちには、自分たちで考えて、楽しんでスポーツをすることがスタンダードだと言える環境であってほしいです。 (取材・文 佐藤梨那)