バレーボール元日本代表・荒木絵里香が考える体罰問題 両親・恩師の言葉で気づいたスポーツの本質
■名門校で育んだ“自主性” 「自分で考えて、説明できることが大事」 人生の糧にも
両親の作ってくれたクラブチームでの練習を経て、地元・倉敷の中学校でバレーボールを続けた荒木さん。入学時には身長が180センチまで伸び、中学1年生で岡山県選抜、中学2年生でU-17の練習にも参加しました。高校生にまざってレベルの高いチームで練習する中で、バレーボール名門校として知られている下北沢成徳高等学校(旧:成徳学園高校)のことを知ったといいます。そこで、出会ったのが恩師・小川良樹監督です。 ◇◇◇◇ 佐藤:成徳が魅力的だと思ったのはどういったところでしょうか。 荒木:まず暴力・怒る指導ではないというところと、選手の自主性を大事にする指導方針を聞いていて。実際に一緒に練習に参加している成徳の先輩方の話を聞いていると、バレーに取り組む姿がかっこよかったし、一緒にやりたいと感じることが一番多かった。あとは、同い年の大山加奈さんが成徳中にいて、彼女と中学2年生の頃から合宿で接する機会があって話を聞いていて、一緒にやりたいなと感じていました。 佐藤:仲間、先輩を見て入学を決めたということですが、実際に成徳に入ってみてどうでしたか。 荒木:“自主性”とか“怒られない”というと、「楽でいいよね」という考えを持つ人もいると思うけど、やらされた方が本当は楽な部分があって。自分で考えてやらないといけないじゃないですか。考えなかったらできないし、結果もついてこない。「考え方がわからない、どう頑張ったらいいのかな」というのが最初の壁としてありました。 佐藤:どう乗り越えたんですか? 荒木:先輩や仲間の姿を見ながら学んだという部分もある。目標を持ってやった中で達成できなくて悔しくて、「自分は何ができなかったから、この目標が達成できないのだろう」と考えられるようになってきた。小川良樹監督は多くは語らないけど、定期的に問いかけるような指導で導いてもらって、少しずつ自分で「こうしよう、ああしよう」と考えながらできるようになっていったのかなと思います。 佐藤:例えば先生が怖いと、「先生がいなかったらそんなに頑張らなくてもいい、先生が見ていない時は手を抜く」とか、悪い流れにもなりますよね。人が見ていたらやるけど、見ていなかったらやらない。社会人になっても「それじゃダメだよね」と言われることにつながると思うんですが、教育的な面ではどう思われますか? 荒木:競技者である時間、バレーボールを一生懸命する時間って人生の中で限られているじゃないですか。私も40歳近くまで競技をしたけど、この先の方がすごく長いから、競技を通じて人生を豊かにする、より良くするという意味で、自分で考えて「何のためにやっているのか、どうしてこうしなくてはいけないのか」を自分の中でちゃんと説明できるようになることが大事。そうすると勝手に頑張れる。別に誰に強要されるわけでも、誰かが怖いからやるわけでもなくて「自分がやりたいからやる、こうしたいと決めたからやる」という方が本当に充実した人生を送るためにも大事になるのかなと思います。