マツダの専売特許じゃない!? いまや幻の「ロータリーエンジン大国」ラインナップは驚愕の20種類!
ハイドロサス+REの夢を追ったシトロエン
NSU、マツダに続く3番手としてRE搭載車を販売したのがシトロエンです。1967年にNSUとの合弁会社コモトールを設立すると、1969~1971年にかけてRE搭載のパイロットモデルとして、「アミ8」をベースにしたシングルローターの「M35」を267台製造し、1973年に2ローターREを搭載した「GSビロトール」を発表しました。 このクルマは、パワフルで良好な乗り心地を実現した新世代のシトロエンを目指して開発されたモデルで、最初に製造した「M35」で得たデータを生かし、空力に優れ、ハイドロニューマチック・サスペンションを備えた「GS」にREを組み合わせているのが特徴です。 ところが、「GSビロトール」の発表直後にオイルショックが到来し、燃費の悪さから同車はいきなり苦境に立たされます。さらにREの耐久性不足が露呈し、ユーザーからのクレームが殺到。シトロエンはわずか1年で生産を打ち切りました。 なお販売された847台の「GSビロトール」はメーカーの手で回収され、解体処分の道に。そのため現存する車両は極めて少なく、このモデルは「幻のREシトロエン」と呼ばれるまでになっています。
秘密のベールに包まれた旧ソ連のRE
最後に紹介するのは旧ソ連(現ロシア)のRE車です。同国の一般庶民に購入を許されていたのは、低出力のVAZやZAZなどに限られており、ソ連政府はKGBを含む治安機関や官公庁、要人の移動用の高性能車にRE搭載車を少量生産していました。同国のREについては共産主義政権の崩壊まで秘密のベールで隠されていたことから、開発経緯など現在でも詳しいことはわかっていません。 どうやらNSU製エンジンを入手し、それを分解・解析することで、リバースエンジニアリングという形で独自に技術発展させたようです。ただ、その一方で1974年にソ連からNSUに技術者を派遣したという記録も残っています。 ソ連のRE搭載車種は全部で8車種が確認されており、VAZ-2101「ジグリ(コペイカ)」に1ローターのVAZ-311エンジンを搭載した「21011」、VAZ-2106「ジグリ2106」に2ローターのVAZ-411エンジンを搭載した「21079」などが代表的なモデルです。試作エンジンや航空機用なども含めると1~4ローターまで20種類のREが製造されたようですが、連邦が崩壊してしばらく経った2002年頃までに、いずれのエンジンも生産を終了しています。 REはトヨタ、日産、GM、フォード、AMC、メルセデス・ベンツなど、様々なメーカーが開発にチャレンジしましたが、搭載する四輪車モデルの市販化までこぎ着けたのはマツダと上記の2社+1国だけでした。
山崎 龍(乗り物系ライター)