なぜ急ぐ?大谷翔平を公式戦で29球4失点の調整登板させた栗山采配に疑念
日ハムの大谷翔平(23)が12日、京セラドームで行われたオリックス戦に今季初先発したが、1回と3分の1、わずか29球で2安打3四球2奪三振4失点して降板した。右足首痛でWBCを辞退した大谷は、二刀流を封印して打者1本で開幕を迎えたが、4月8日に走塁途中に左太もも裏を痛めて長期離脱。この日の1軍マウンドは、昨年10月22日の日本シリーズ第1戦の広島戦以来263日ぶりで、最速は158キロをマークしたがコントロールもバラバラで本来の大谷の姿にはほど遠かった。結局、チームは序盤の大量失点が響き今季7度目の3連敗で借金「20」。公式戦でゲームを壊すような“調整先発”を断行した栗山采配に疑念が残った。 ボールが暴れた。オリックスのトップバッター、小島に対して1球、2球とストレートが引っかかった。ワンバウンドになり清水が捕球できない。結局、四球で歩かせた。駿太はフォークで三振。吉田正は155キロのストレートで押し込んで一塁ゴロ併殺打に打ち取ったが、2回に入っても修正は効かなかった。 4番のロメロをフォークでスイングアウトに取ってから、小谷野に2つ目の四球。ストレートの最速は158キロをマークしたが、続くマレーロを打ち取った当たりがレアードの前で弾み、素手で捕球しようとしたその手に収まらなかった(記録は内野安打)。一死一、二塁から、T-岡田には高めに浮いたストレートをジャストミートされた。打球は一、二塁間へ。満塁になって大城を迎え、また外へのストレートを制御できない。ひとつもストライクを取れずに痛恨の押し出し四球。ここで栗山監督がベンチを出て降板を告げると、京セラドームは、異様などよめきと、ざわめきに包まれた。 大谷はプロ最速降板となったがKO降板ではない。当初から30球程度の予定だったのだ。日ハムのブルペンは、あらかじめメンドーサを第二先発的に用意していたというが、一死満塁での登場では荷が重たかった。伊藤にレフト線への走者一掃の二塁打を浴び、駿太の犠飛もあって、0-5とリードを許してしまった。 短いイニングで、次から次へと先発を代えて目先を変えていくという起用法はある。3月のWBCではイスラエル代表がその戦略で快進撃したし、古くは1992年に中日の高木守道監督が、優勝目前だった阪神をその戦略で封じ込んで、ヤクルトが優勝をかっさらったこともある。 だが、今回の大谷の約30球に限定しての先発理由は違ったようである。 栗山監督の起用理由は、「一軍で投げてみないとわからない反応や出力の仕方がある」だったそうだが、結果的には、中途半端な起用で1試合を捨てたことになった。なぜここまで急ぐのか理解に苦しむ。 もちろん勝負のマウンドに立った大谷には調整登板などという概念はなかった。