なぜ急ぐ?大谷翔平を公式戦で29球4失点の調整登板させた栗山采配に疑念
広報談話は悔しさに溢れていた。 「やろうとしたことは全然できなかったですね。出力を上げるという意味では問題なかったんですけど、制御することができませんでした。課題が残る内容でした。メンドーサにも申し訳ないことをしました。きょうの反省を次に生かせるよう、しっかり調整していきます」 言い方は悪いが、公式戦で調整登板をさせた、使った側の問題である。 確かに1軍のマウンドでなければ出てこない緊張感や打者の反応レベルはあるだろう。しかし、その調整をたった30球の球数制限をつけて1軍の公式マウンドで行うのは間違っている。大谷を見られることで満足しているファンもいただろうが、相手チームに対するリスペクトを微塵も感じさせない采配ではなかったか。 大谷は、1日のイースタンリーグの西武戦で投手として復帰、1回23球を投げて、6日には西武戦前に打撃投手として50球を投げ込み、この日の先発マウンドを迎えた。明らかな調整不足で見切り発進もいいところ。軸足でプレートをしっかりと蹴ることができていないからボールに体重が乗らず、フォームは、1球、1球バラバラだった。 パ・リーグの野球に詳しい評論家の池田親興さんも、「大谷の感覚は、彼にしかわからないものがある。F1のエンジンが普通車に載っているようなものだから、試合をこなすなかでバランスと力の入れ具合の場所を調整していくのだろうと思う。わずか2試合では、出力を制御できないのも当然かもしれない。2軍で、もう少し感覚と肉体を摺り合わせてからでも良かったのではないか」という意見。 その上で「言い方は悪いが、大谷に1試合をあげた形になった。前半の最終戦ということもあったのだろうが、負けがこんでいるチームに、そこまでの余裕はなかったはず。満塁でバトンを渡されたメンドーサは気の毒だったが、たとえ30球でビシっといったとしても、後を任せられるピッチャーは試合に入りにくかっただろう。考えがあっての采配を批判できないが、1軍の1試合を調整のためにもらった大谷も、メンドーサも、両方がかわいそうに思えた。重要なことは、この試合を後半に向けて生かすかどうかだろうが」と続けた。 まだDHでも1試合で3打席以上立っていない状況で、ここまで急いで二刀流復帰にこだわる必要はあるのだろうか。栗山監督なりに後半戦の大谷起用プランを練っているのかもしれないが、余りに急いで無理をさせると故障再発の危険性もある。理解に苦しむ“調整登板の失敗”のツケが回ってこなければいいのだが。